ブルシャーク 雪富千晶紀著

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ブルシャーク

『ブルシャーク』

著者
雪富千晶紀 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912987
発売日
2019/08/22
価格
1,760円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ブルシャーク 雪富千晶紀著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 来常(きつね)湖は、富士山を仰ぐ山間(やまあい)にある美しい貯水湖だ。もうすぐ自治体主催のトライアスロン大会が開催される。しかしこの水の底には不穏な影が――。やがて発生する奇妙な行方不明事件。湖に生息する魚や亀、水鳥たちは知っている。その影の正体を。

 タイトルのブルシャークとはオオメジロザメのことだ。獰猛(どうもう)で敏捷(びんしょう)で、世界三大危険鮫(さめ)の一つとされている。これだけ書けばもうお察し、本書は正統派の「ジョーズ」小説である。あの名作映画では鮫ハンターの漁師が活躍したが、本書では女性海洋生物学者が謎のブルシャークを追跡する。但(ただ)し彼女は鮫を憎んではいない。むしろ守ろうとしている。ここがユニークな読みどころだ。

 山のなかの淡水湖にどうやって鮫が侵入できる? 錯覚と思い過ごしじゃないの? 疑問と思惑が交錯するなかで、巨大ブルシャークは密(ひそ)かに犠牲者を喰(くら)っている。その恐怖を読者はつぶさに見せつけられるのに、主人公たちは終盤まで知り得ないのがスリリング。ついにトライアスロン大会が始まってからは、驚愕(きょうがく)のラストまで一気読みです。(光文社、1600円)

読売新聞
2019年9月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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