【児童書】『とんでいったふうせんは』

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とんでいった ふうせんは

『とんでいった ふうせんは』

著者
ジェシー・オリベロス [著]/ダナ・ウルエコッテ [イラスト]/落合恵子 [訳]
出版社
絵本塾出版
ISBN
9784864841528
発売日
2019/09/24
価格
1,650円(税込)

【児童書】『とんでいったふうせんは』

[レビュアー] 三保谷浩輝

 ■記憶という風船失っても…

 だれもが持っている記憶という風船。たとえばぼくのとびきりの風船には、去年の誕生日の思い出が入っている。ぼくよりパパとママ、もっと長く生きてきたおじいちゃんは〈ぼくたちよりも もっとたくさんのふうせんをもっている〉。

 おじいちゃんのむらさきの風船には、おばあちゃんと結婚したときの、ぎんいろの風船には、ぼくと川で魚を釣った日の思い出がつまっている。風船を見て、〈なにかひとつおもいだすたびに おじいちゃんはげんきになる〉が、やがて風船は次々とおじいちゃんの手から離れていく。悲しむぼくにパパとママは…。

 記憶を失っていく家族を理解し、愛情深く過ごす道を示す。抑えた色、タッチのイラストの中でカラフルな風船が映える。

 著者が祖父のアルツハイマー病発症をきっかけに、人生には試練もあるが、希望も満ちていることを子供たちに伝えたいと書いた一冊。訳者も認知症の母親を介護した経験があり、この本に「もっと早くであっていたら」のあとがきも寄せている。(ジェシー・オリベロス文、ダナ・ウルエコッテ絵、落合恵子訳/絵本塾出版・1500円+税)

産経新聞
2019年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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