北欧に学ぶ 好きな人ができたら、どうする?…作 アンネッテ・ヘアツォーク、絵 カトリーネ・クランテほか

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北欧に学ぶ 好きな人ができたら、どうする?

『北欧に学ぶ 好きな人ができたら、どうする?』

著者
アンネッテ・ヘアツォーク [著]/カトリーネ・クランテ [イラスト]/ラスムス・ブラインホイ [イラスト]/枇谷玲子 [訳]
出版社
晶文社
ISBN
9784794971005
発売日
2019/09/12
価格
1,925円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

北欧に学ぶ 好きな人ができたら、どうする?…作 アンネッテ・ヘアツォーク、絵 カトリーネ・クランテほか

[レビュアー] 一青窈(歌手)

 デンマークの漫画で左右から天地逆さまにして読めるユニークな装丁。タイトル通り、好きな人ができたらどうするのかという問いに対し、知識人やジョン・レノンの言葉を引用し、愉快にモノローグを展開させて少年少女を大人の一歩へ誘(いざな)う。例えば哲学者のプラトンは「顔やからだの美しさとおなじぐらい、心や存在の美しさも愛の原動力になりうる」と答える。大人になったって、恋に悩み、愛がなんなのかわからず彷徨(さまよ)うのだ。世界の賢人たちが思想をぶつけ合い、終(しま)いには喧嘩(けんか)をはじめる最中にレノンは「all you need is love」と歌う。そこで私達(たち)は気づく、すべての子供が自分の足で大人になったという事を。

 また、お祭りの8日間だけ夫婦として過ごすアルゼンチンのネイティブ・アメリカンや客人をもてなすために妻を差し出すかつてのイヌイットの習慣等が紹介されているので自分の既成概念を崩してくれる。

 私個人は13年前にアフリカのツンザという村をマサイ族の最後の戦士とその第2夫人である永松真紀さんと旅行した。なぜ一夫多妻制が成り立つのかというと役割で妻たちが支え合う文化圏だからであり、愛とは文化なのだと知り、自分がいかに狭い恋愛観で悩んでいたかを目の当たりにした。と同時に私の苦悩はちっぽけだと分かった。

 男女間に嫉妬は存在せず、キスやハグが一切無くとも信頼で繋(つな)がれる夫婦が在(あ)る事に驚いたが、この本では旅に出ずとも作中の様々な結婚観を通して、普通なんて無い事、性欲の大きさが必ずしも愛の大きさを示すわけではない事を学べるのだ。鳥や昆虫の交尾を例に家族のありかたもまた、千差万別だと知る。一方、心と反対の行動をとってばかばか私のばか!と思うのも、初恋の失恋が地獄なのも世界共通だとホッとするのだ。私たち日本人は性教育をオープンにせず、秘すれば花とする美徳を持つので、思春期の子供がいる親にはうってつけの1冊。枇谷玲子訳。

 ◇Annette Herzog=旧東独生まれ。児童書、児童劇作家、ラジオ・ドラマ脚本家。91年、コペンハーゲンに移住。

読売新聞
2019年10月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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