熱狂と幻滅 コロンビア和平の深層…田村剛著

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熱狂と幻滅

『熱狂と幻滅』

著者
田村剛 [著]
出版社
朝日新聞出版
ISBN
9784022516183
発売日
2019/06/20
価格
1,650円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

熱狂と幻滅 コロンビア和平の深層…田村剛著

[レビュアー] 篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

 コロンビア革命軍(FARC)は、1964年に結成された中南米最大の反政府武装組織であった。そのFARCが、2016年に、政府と和平合意を結んだ。ところが和平合意の是非を問う国民投票では、反対が賛成を僅差で上回った。しかしサントス大統領へのノーベル平和賞という国際的後押しもあり、和平合意は修正され、国会で承認された。FARCは武装解除に応じ、合法政党化した。

 この劇的な時期に中南米特派員だった著者が、コロンビアでの精力的な取材の結果をまとめたのが、本書である。

 和平合意後の戦場で出会ったFARC女性戦闘員が、武装解除後に素性を隠して社会復帰していく様子など、極めて興味深い情景が描かれる。

 FARCの攻撃や誘拐の犠牲者の遺族は、FARCを合法化する和平合意に直面し、賛成派と反対派に分かれる。著者は、様々な人々に丁寧に聞き取り調査を行い、和解の困難を浮かび上がらせる。

 19世紀以降コロンビアは内戦を繰り返しているが、その背景には甚大な社会格差がある。和平合意は、社会問題の解決への一歩に過ぎない。(朝日新聞出版、1500円)

読売新聞
2019年10月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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