『女性のいない民主主義』
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男の幸福も阻んでいる女性の“働きにくさ”
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
日本は女性政治家が極端に少ない国だ。他の先進諸国と比べても突出して日本だけがこうなっている。
でも、それの何が問題なのか。現在いる議員は、男女比が半々である有権者の選んだ人たちだから、女性の意見だって反映されているのではないか。
しかし、それは単純な思い込みだった。前田健太郎『女性のいない民主主義』は、女性が自分たちの意見や都合をストレートに表明することを阻んでいる何重ものバリアをひとつひとつ見つけていく。女性は、発言機会が奪われたり出世が頭打ちになったりする自分たちの不利を認識しているが、男性にとって自分たちのもつ特権は空気のように見えにくく、変革など必要ないと思いがちだ。この本は「民主主義」や「政策」のもつ意味を問い直し、有権者と政治家の行動原理を検証し、女性が権力をもつことを特に難しくしている要因をあぶりだす。
女性の働きにくさは日本の国会にとっていまでも他人事である。「女は無知で素朴でかわいらしく、男に守られる存在であれ」という圧力が消えないかぎり、「男は女に貢ぐべし、一生休みなく働け、稼ぎがなくなった男は粗大ゴミ」という逆向きの圧力も消えない。互いの首を絞めている綱をほどくには、女が自力で自分の人生と生活を守れるようにするのが一番の早道ではないか。女からの報復がなくなれば、きっと男たちはいまよりずっと幸福になれる。そのためにも読むべき一冊だ。