北朝鮮と観光…礒崎敦仁著

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北朝鮮と観光

『北朝鮮と観光』

著者
礒﨑敦仁 [著]
出版社
毎日新聞出版
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784620325934
発売日
2019/07/27
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

北朝鮮と観光…礒崎敦仁著

[レビュアー] 藤原辰史(農業史研究者)

 日本では北朝鮮と呼ばれるこの国は、日本のかつての植民地だが、国交もなく謎に包まれたままである。解決に向かわぬ拉致問題も、たびたび発射される「飛翔(ひしょう)体」も、この国の闇を深めるだけだ。

 本書は、「観光」という意表を突く視点から、北朝鮮の実態に迫ろうとする。最大限資料を集め実地調査に赴き、外貨稼ぎと体制宣伝という目的、それとずれる実態を、歴史を振り返りつつ分析する著者の態度は冷静で科学的だ。

 日本からの観光にはまずビザが必要。突然、入国不可となることも。現地では2人以上の案内員がついて案内される。単独行動は厳禁。平壌で記念碑や広場や工場や博物館を見学したり、マスゲームやサーカスを鑑賞したり、名物の冷麺をすすったり、アヒルの焼肉を食べたりと様々だ。

 全体として北朝鮮観光は意外なほど簡便で多彩だが、韓国人の人気の的だった景勝地の金剛山(クムガンサン)や開城(ケソン)の観光は中断されている。韓国人観光客の増加は必ずしも体制側の意図と合致しないようである。

 本書のように小さな学びを積み上げる地道な努力こそ、北朝鮮を理解する近道だ。(毎日新聞出版、2000円)

読売新聞
2019年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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