秋吉敏子と渡辺貞夫…西田浩著

レビュー

6
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秋吉敏子と渡辺貞夫

『秋吉敏子と渡辺貞夫』

著者
西田 浩 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/音楽・舞踊
ISBN
9784106108266
発売日
2019/08/09
価格
792円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

秋吉敏子と渡辺貞夫…西田浩著

[レビュアー] 加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

 ジャズ音楽家の二大巨匠の評伝。戦後の日本を動かした「天の配剤」とも呼ぶべきダイナミズムを、インタビューを交えて、生き生きと描く。

 1953年、横浜の進駐軍のクラブでの演奏をきっかけに、20歳の貞夫と23歳の敏子が出会う。後に2人はそれぞれ渡米し、本場の一流のミュージシャンと共演して自分を磨き、道なき道を進む。

 敏子は、デューク・エリントンが黒人という自身のルーツに根ざす音楽を作り続けた姿勢に感銘を受ける。米国でビッグバンドを結成し、日本文化とジャズを融合。偏見をはね返し人気と評価を得る。

 貞夫は帰国を選ぶ。後進を育成し、日本にいる強みを生かしてブラジルやアフリカを旅し、音楽的視野を広げる。

 挿話の数々も興味深い。戦後の進駐軍ジャズの中核を担ったのは旧日本軍の軍楽隊の面々だった。少年時代、進駐軍を見てあこがれた貞夫は、来日したジャズ好きのクリントン大統領の前で演奏して礼状をもらい、感慨にふける。

 敏子と貞夫は、80歳代の今もステージに立ち、新しい挑戦を続けている。人生論としても痛快な本だ。(新潮新書、720円)

読売新聞
2019年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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