真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園…三宅玲子著 文芸春秋

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真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園

『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』

著者
三宅 玲子 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163910956
発売日
2019/09/09
価格
1,650円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園…三宅玲子著 文芸春秋

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

 鮮やかなネオンサインが浮かぶ頃、和服やミニドレスの女性がビルに吸い込まれていく。夜の街、福岡・中洲。そんな歓楽街の一角に深夜2時まで子どもを預かる夜間保育園がある。どろんこ保育園(第2どろんこ夜間保育園)だ。

 本書は、そんな夜間保育園にわが子を預ける親たちや保育関係者に取材したルポである。

 昼間の園児120人、夜の園児65人。朝7時に開所すると、年齢と登園時間帯でクラス分けされた園児たちは過ごし始める。夜8時近く、20人の「寝る子」たちはパジャマに着替え、小さな布団でママやパパのお迎えを待つ。

 親たちの人生は様々だ。2歳の男児を預ける20代後半の女性は未婚で出産、産後1か月で中洲のクラブに働きに出た。当初はベビーホテルに預けていたが、市によってどろんこ保育園への転入が図られた。通園当初の登園時間は午後6時頃。不規則な生活を園で指導されていた。

 卒園後の小学3年生男子を学童クラブとして預けていたのは22歳で未婚で出産した女性。中洲での仕事が終わると保育園で寝ていた子どもを起こし、2時過ぎに帰宅する。彼女は言う。「どろんこのおかげでほんと助かってるんです」

 ノンフィクションライターの著者は取材を広げる。夜間保育を40年以上続けてきたどろんこの運営者の歩みや、それ以外のベビーホテルの実情にも目を向け、そこからさらに過去にも遡る。ずさんな保育をしていたベビーホテルが社会問題化され、児童福祉法改正などを経て、認可されてきた歴史も掘り起こしていく。

 制度の不備を問題視する一方、夜に働く女性たちを見る著者の目線はあたたかい。折々で自身が母として過ごしてきた日々の雑感も内省的に挟み込まれる。そうした低い目線があるためか、後半、取材したある女性からもちかけられる相談と交流は読む者をほっとさせる。

 幼保無償化が始まったが、支援が必要な親子はまだ暗がりにいることを本書は伝えている。

読売新聞
2019年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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