2020年教育改革で何が変わる? 家庭教育でも必須になる「非認知能力」開発(前編)

対談・鼎談

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「非認知能力」の育て方

『「非認知能力」の育て方』

著者
ボーク 重子 [著]
出版社
小学館
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784093886338
発売日
2018/10/26
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

2020年教育改革で何が変わる? 家庭教育でも必須になる「非認知能力」開発(前編)

[文] 小学館


翁安芸さんとボーク重子さん

 2020年の教育改革で一体何がどう変わるのか、不安に思うかたもいるだろう。簡単に言えば、これまでの学力一辺倒だった教育から、人間力を養う教育にシフトしていく第一歩となる改革だ。入試でも「YES」「NO」や数字の解答ではなく、記述式の解答が求められるものも増えていく。

 AIが様々な仕事を奪っていくいま、人間にしか持てない能力が求められていくのは当然のこと。IQやテストなどで数値化できる能力=「認知能力」に対して、やり抜く力、問題解決能力、想像力、共働力、コミュニケーション力など数値化できない人間力を「非認知能力」と呼ぶ。

 著書『「非認知能力」の育て方』(小学館)で、非認知能力教育を重視するアメリカでの自身の子育て経験を元に、どうしたら子どもの能力を育むことができるのかを著したボーク重子さんと、カリスマママモデルとしてまたインフルエンサーとして子育てママ世代から絶大な人気を誇る翁安芸(おう・あき)さんが対談を行った。

 その内容を2回に分けてお伝えする。

 ***


ボーク重子さん

ボーク重子(以下、ボーク) 安芸さんのお嬢さんはいま2歳半でしたよね。かわいい盛りでしょう。

翁安芸(以下、翁) 子どもってすごいですね。つい最近まで短い言葉しか話せなかったはずなのに、今はもうちゃんとコミュニケーションがとれるようになりました。それに、すごく大人の話を聞いてるんだな、と感じます。私が話していたことをお人形に向かって話しかけていたりして。まだ赤ちゃんかと思って一方的に話しかけていたのが、最近はすぐ言葉が返ってくるようになって。

ボーク どんな会話をするんですか?

翁 今プレスクールに通っているので、「今日学校で何をしたの?」とか、「何を歌ったの?」とか、ですね。

ボーク 素晴らしい! そういう、YES/NOで答えられない質問が子どものコミュニケーション力を育むんですよ。

翁 ボークさんのご著書『「非認知能力」の育て方』を拝読して、ママとの会話が子どもの非認知能力を育てるのにどれだけ重要かよくわかりました。娘はまだ小さいので私の仕事に連れていくことはないのですが、私は母の仕事の現場に子どものころからよくついていっていました。レストラン関係なのですが、子どもが大人の世界として夢に描くようなキラキラ感はなくて、とにかく大変、という印象を受けました。母も悩みがあれば包み隠さず、小さな私に話してくれて、「どう思う?」と意見を聞かれたりもしました。

ボーク まさにそれが非認知能力を育む経験になっていると思います。親が子どもの考える力を信頼し、一人の人間として尊重して対話すること。その「信頼感」を子どもは敏感に感じとります。そして、それが自分で考え、自分でない誰かのために解決策を考える「問題解決力」を育てることにも繋がります。

翁 ボークさんもお母様の仕事ぶりをよく見ていたと本に書かれていました。

ボーク そうですね。母は福島で英語塾を開いたのですが、元々大きな学習塾が近くにある環境下で、しかもそれまで教育関係の仕事をしたこともなかった彼女がまさに手作りで始めたわけですから、本当に大変でした。夜中の2時にふと起きて居間の灯りに気がつき、母がこたつで手書きの教材作りをしているのを見たこともよくありました。ですから、私もよく「ガリ版刷り」の手伝いをしたりしましたね。


翁安芸さん

翁 子どもがそういう親の姿から学ぶことは多いのですね。私も娘がもう少し大きくなったら、様々な大人の世界を見せていきたいと思っています。今は、母のレストランに連れていく程度ですが、母と一緒にテーブルを回ったりして、それなりに活躍しています(笑)。でも人見知り的なところも少し出てきて、たまに母や私の後ろに隠れたりしますが。

ボーク それは当然。隠れてOK(笑)。安芸さんは、それを「ダメ」と言ったりしないのが素晴らしい。シャイなのは個性ですから、叱ることではない。

翁 そういう場面があったら、あとで二人になったときに、「さっきは隠れちゃったから、今度はあいさつできたらうれしいね」と話したりします。それでも次の機会も隠れてしまったら、また「次は隠れなくてよかったらすごいね」と。そんなことを繰り返しているうちにできるようになるのかな、と思っています。アメリカに行くと、小さい頃からみんなあいさつがしっかりできて、大人とちゃんと会話できることに驚かされますね。それだけ場に慣れているというか、家庭での教育ができているんですね。

ボーク 誰かと会ってあいさつできないというのは、そこで人間関係が終わってしまうわけですね。人間関係を築くことの大切さは、アメリカではかなり早くから教えられると思います。まずは家族の中。家族というのは社会のコミュニティの最小単位。そこから人間について学んでいくことは本当に大切なのです。家族の中でも「おはよう」「ただいま」「おやすみ」「ありがとう」「ごめんなさい」は必ず言う。何か聞かれたら必ず答える。我が家では娘に何か質問したら、答えが「わかんない」だけで終わるのはナシ、というルールを作っていました。

翁 なるほど! とにかく会話に繋げていくわけですね。

(以下、後編)

 ***

ボーク重子(ぼーく・しげこ)
作家・ICF会員ライフコーチ。福島県出身、米・ワシントンDC在住。ロンドンのサザビーズ・インスティテュート・オブ・アートで現代美術史の修士号を取得。アメリカ人である現在の夫と出会い、1998年渡米、出産。娘・スカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝、多くのメディアに取りあげられた。現在は全米・日本各地で、子育て・キャリア構築・ワークライフバランスについての講演会やワークショップを展開中。著書多数。

翁安芸(おう・あき)
1982年生まれ。ハワイ、LA、NY生活のなかで、ハリウッド映画の衣装やスタイリストのアシスタント、PR会社や人気セレクトショップなどのインターンを経験。帰国後はラグジュアリーブランドのPRを経て、フリーランスPRとして独立。ファッション分野にとどまらずライフスタイルのインフルエンサーとして活躍中。2018年4月に初の書籍『ときめく服だけ着ればいい −日常をちょっと素敵にする「大人可愛い」の作り方−』(光文社)を発売。

撮影・浅野剛

小学館
2019年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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