思考力・判断力・表現力を養う「エラー力」はプログラミング教育で身につける

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思考力・判断力・表現力を養う「エラー力」はプログラミング教育で身につける

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

今後10~20年の間にAIが人間の能力を超える「シンギュラリティ」が起こるかもしれないという話は、いまやすっかり有名です。

そんななか、「人工知能にできないことをできるようになろう」という話が出てくるのは、むしろ当然のことかもしれません。

いわば、クリエイティブであり、思考力・判断力・表現力によって、人工知能ではできない能力を獲得すべきだという考え方です。

でも現実問題として、「クリエイティブな人間」や「思考力・判断力・表現力がある人間」は、どうすれば育つのでしょうか?

このことについて、『エラーする力──AI時代に幸せになる子のすごいプログラミング教育』(福井俊保 著、自由国民社)の著者は次のように述べています。

日本では「クリエイティブな人間」は天才だと思われ、自分たちとは異質な人間だと思われがちです。また、「思考力・判断力・表現力がある人間」はそもそも「頭が良い子」と言われることが少なくありません。

しかし、「クリエイティブな人間」や「思考力・判断力・表現力がある人間」は育てることができるのです。 そして、そのために必要なのは「エラー(=失敗)する力」を育てることです。(「はじめに」より)

実際のところ、ビジネスで成功した人を中心とした「クリエイティブな人間」や「思考力・判断力・表現力がある人間」は、多くの失敗をし、そこから学んでいるということ。

その失敗が新しいものを生み出し、成功につながるケースが多いわけです。

「エラーする力」とは、努力や挑戦をして失敗しても諦めない力のこと。

そして重要なのは、なんにでも興味を持つ「好奇心」、自分ならできるという「自負心」、失敗してもあきらめない「忍耐力」、失敗してもすぐに次の挑戦ができる「回復力」。

これら4つの力を鍛えることで、「エラーする力」が身につくというのです。

だとすれば、具体的になにをすれば4つの力が身につくのかを知りたいところですが、著者によればそれはプログラミング教育なのだとか。

なぜならプログラミングには、「好奇心」「自負心」「忍耐力」「回復力」を育てる要素が含まれているから。

そこで本書において著者は、これからのAI時代を生き抜くために「エラーする力」を身につけ、AIを使いこなせる子どもの育て方を伝えているわけです。

きょうは3章「『エラーする力』が自動的に身につくプログラミング教育」のなかから、「『知識』と『考える』を分けると諦めない子どもが育つを抜き出してみましょう。

「知識」と「考える」を分けると「諦めない子ども」が育つ

「エラーする力」を身につけるためには、「この問題は絶対にできる」と、諦めることなく挑戦する「自負心」が必要。

とはいえ教える内容によっては、なにがわからないのかわからないし、なにをしたらいいのかわからないと言われることもあるもの。

ここで大切なのは、「知識」と「考える」を分けておくことだといいます。たとえば習っていない漢字について、「考えなさい」と言ったところで答えが出てくるはずはありません。

まず「知識」と「考える」を分け、知識については教え、考えるべきところは教えなくていいということです。

中学受験の算数では、書き出すことで答えが見えてくることもあります。

つまり、考えればできる問題です。規則の問題はその典型ですが、どのような規則になっているのか、まずは書き出してみることが大切だということ。

たとえば、次のような問題があったとしましょう。

1時間おきに荷物が3つずつ増える魔法の箱があるとします。その箱には最初荷物が5個入っていました。17時間後には荷物は何個ありますか。(119ページより)

これは8、11、14、17……と数が増えていく問題。

書き出していけば簡単に答えにたどり着くことができます。考えればできる問題なので知識ではなく、教える必要もないわけです。

ところが問題文を一回読んだだけで、「自分にはこの問題はできません」と、自分のできるラインを勝手に引いてしまう子どもがいるのだそうです。

そればかりか、「まず書き出してみようね」と話しても、なかなかやらないというのです。

慣れてくれば、「こういうときはどうすればいいか」がわかるようになる

そこで、そういうなかなか手が動かない子どもには、「スクラッチプログラミング」をやらせるのだそうです。

子ども向けのプログラミング言語であるスクラッチプログラミングは、すでにブロックが用意されているため、それを用いて挑戦することが可能。

慣れてくれば、「こういうときはどうすればいいか」ということもわかるようになるといいます。

もちろん問題によっては、難しくてなかなかできないということもあるでしょう。しかし上手に指導していくことで、「ここは考えたらわかる」という部分が増えてくることに。

その際に、ブロックの上手な使い方などの知識を合わせて教えていくべきだというのです。

例えば、正五角形を描く問題があります。

角度に関しては知識ですので教える必要があります。

しかし何度曲がるかが分かれば、あとは正五角形になるまで繰り返し実行していけばよいだけです。

さらに、星型はどうすればできるのだろう、と考えていきます。

そして、プログラミングで図形ができ上がると達成感があります。

(120ページより)

そうした小さな「わかる」が積み重なることで、失敗しても諦めないようになっていくということ。そして自分に自信を持つことができ、「自負心」が育っていくというわけです。

ご存知のとおり、コンピュータの場合、計算ミスというものはありません。計算ミスで×になると、子どもたちはやる気をなくすことが多いもの。

しかし考え方だけが合っていればいいのですから、「どう考えるか」については挑戦できる子が多いというのです。

そして、こうしたやり方は「回復力」や「忍耐力」を引き出すことにも役立つそうです。

プログラミング教育についての書籍だとだけ聞くと、難しそうなイメージを抱いてしまうかもしれません。

しかしこのように、誰にでもわかりやすく書かれているため、読者は要点をしっかりとつかむことができるはず。

AIに負けない能力を子どもに身につけさせるため、ぜひとも参考にしたい一冊です。

Photo: 印南敦史

Source: 自由国民社

メディアジーン lifehacker
2019年10月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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