熊谷守一…古川秀昭著

レビュー

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熊谷守一

『熊谷守一』

著者
古川 秀昭 [著]
出版社
ミネルヴァ書房
ジャンル
歴史・地理/伝記
ISBN
9784623087402
発売日
2019/09/09
価格
3,520円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

熊谷守一…古川秀昭著

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 1977年に97歳で亡くなった画家の熊谷守一は、没後40年以上が経(た)ってはいるが、その絵はいまでも魅力的で人気があり、各地で展覧会がひらかれていて、去年は彼とその妻を主人公にした映画も公開されている。

 熊谷の後年は、池袋にある自宅の小さな庭を歩きまわり、草花、虫や鳥、猫などを観察し、気が向くと絵を描いていた。庭に住み着いたカラスが彼の頭にとまって髪をついばんでいる写真が本書に載っているのだが、彼がいかに、その庭の自然に溶け込んでいたのかが良くわかる。

 このようにほのぼのした雰囲気を醸し出している熊谷であるが、50歳を過ぎるまでの人生は決して平坦(へいたん)ではなかった。生活は困窮し、息子を亡くしたりもしている。

 熊谷は「目に見えないものをかきたくなりましてね。バカらしいことをやったものですわね」と語っている。果たして「目に見えないもの」とは何なのか?

 本書は彼の生きた姿を追いつつ、そこを読み解いていく。そして熊谷がいかに魅力的な人物であったのか知ることができる。(ミネルヴァ書房、3200円)

読売新聞
2019年10月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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