図説 世界の陰謀・謀略論百科…デヴィッド・サウスウェル、グレイム・ドナルド著 STUFF THEY DON’T WANT YOU TO KNOW 原書房

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[図説]世界の陰謀・謀略論百科

『[図説]世界の陰謀・謀略論百科』

著者
デヴィッド・サウスウェル [著]/グレイム・ドナルド [著]/内田智穂子 [訳]
出版社
原書房
ISBN
9784562056767
発売日
2019/09/04
価格
4,950円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

図説 世界の陰謀・謀略論百科…デヴィッド・サウスウェル、グレイム・ドナルド著 STUFF THEY DON’T WANT YOU TO KNOW 原書房

[レビュアー] 加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

 世に陰謀めいた噂(うわさ)は多い。モーツァルトやマリリン・モンロー、ダイアナ妃の死は、謀殺だった。ルーズヴェルトは真珠湾攻撃を事前に知っていた。トランプタワーの居住者にロシア・マフィアがいることと、トランプの大統領就任には関連がある。エイズのHIVウイルスは生物兵器だった。エルヴィス・プレスリーは今も生きている、等々。

 本書は、このような噂を90件取り上げ、詳しく紹介する。

 1973年設立の「日米欧三極委員会」は、米国の大統領をはじめ世界の要人で構成される。が、メディアへの露出は少ない。多忙なエリートが単なるおしゃべりに時間を捻出するだろうか。黒幕がいて世界征服の密議をしているに違いない。著者は、そんな噂を紹介した後、考察する。通信が暗号化されている現代、謀議のため人目に付く団体を作る必要はない。金持ちがオフィスを離れて高価なワインやゴルフを楽しむために作った団体にすぎない、と。

 他の噂も、合理的思考で考察してゆく。同時に、噂の裏にはしばしば驚くべき事実が隠されていることも、明らかにする。

 英国政府はUFO目撃事件を隠蔽(いんぺい)した。サッチャー元首相も「人前で口にしてはなりません」と質問者を叱責(しっせき)した。現場の近くに、ヨーロッパ全土を廃墟(はいきょ)にできる核兵器が保管されていたからだ。「9・11」の同時多発テロの後、米国の自作自演説が噂された。米国にはノースウッズ作戦という「前科」がある。ケネディ大統領の時代、キューバ攻撃の口実を作るため、キューバ人に扮(ふん)した工作員が航空機をハイジャックし多発テロを起こすという狂気じみた隠密作戦を、当時の米国の統合参謀本部は本気で実行しようとした。

 著者が引用する2世紀のローマの詩人の言葉は重い。「自分の守護者から自分を守ってくれるのは誰なのか?」。陰謀論の根底にある、国や常識を疑う民衆の想像力は、案外、大切かもしれない。内田智穂子訳。

 ◇D.Southwell=著述家、ジャーナリスト◇G.Donald=作家。著書に『図説偽科学・珍学説読本』。

読売新聞
2019年10月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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