【聞きたい。】飯島敏宏さん 『ギブミー・チョコレート』

インタビュー

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【聞きたい。】飯島敏宏さん 『ギブミー・チョコレート』

[文] 産経新聞社

 ■平和への思い込めた初小説


飯島敏宏さん

 特撮シリーズ「ウルトラQ」「ウルトラマン」や、ドラマ「泣いてたまるか」「金曜日の妻たちへ」の監督・演出で知られる飯島敏宏さんが、米寿を前に処女小説を執筆した。テレビマンとしての話は、エッセー『バルタン星人を知っていますか?』に詳しいが、今回は、少年時代の戦争体験に基づいた自伝的小説だ。

 主人公の小学生、ヒロシは、仲良しのチュウらとともに生まれ育った東京から地方に疎開、のびのびと過ごしていたが、そこに軍国主義の教師たちがやってくる。昭和20年3月、中学受験のため東京に戻ったヒロシとチュウは大規模な空襲に見舞われ…。

 令和の世に戦時の話は「暗い」などと捉えられがち。だが、戦況が悪化した末期の集団疎開と違い、早い時期に実験的に行われ、飯島さんたちが体験した疎開は「楽しかったよな」と同窓会で振り返る機会も多く、「小説の構想そのものは50年前からあった」。

 本作では、教育の大切さも伝えたかったという。「当時の『少国民』と呼ばれた子供らには、一寸の虫にも五分の魂があった。僕らも焼夷弾(しょういだん)は、覆いかぶさって消すという教育を受けて、そう思っていた。教育にはそういう怖さもある」と語る。

 それだけに、今の世に対して「どう生きるか、自分の声を忘れてはダメ。(戦時を知る)われわれはそれを伝えられる最後の世代」との思いも込める。

 脚本執筆はあるが、小説は思ったより難産だった。「リアルにとらわれすぎ、当初はエッセーのようになってしまった」と苦笑するが、自身をヒロシとチュウの2人に投影し、ファンタジーな面を加え、小説に昇華した。自らの手で映像化したものも見てみたい。

 今世紀に入ってからは、地球人とわかり合うバルタン星人を描くなど、平和主義はますます。

 「『ウルトラマン』などに込めた平和への思いも、この本を通してわかってもらえればいい」(KADOKAWA・1800円+税)

 兼松康

   ◇

【プロフィル】飯島敏宏

 いいじま・としひろ 昭和7年、東京都生まれ。慶大文学部卒業後、KRT(現TBS)に入社。演出部、映像部に所属し、数々の名作を手掛けた。

産経新聞
2019年11月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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