ネット右派の歴史社会学…伊藤昌亮著

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ネット右派の歴史社会学

『ネット右派の歴史社会学』

著者
伊藤 昌亮 [著]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787234582
発売日
2019/08/14
価格
3,300円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ネット右派の歴史社会学…伊藤昌亮著

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

評・森健(ジャーナリスト 専修大非常勤講師)

 ネット上で保守的、右翼的な言動をするネット右派はどのように広がってきたのか。

 本書はネット登場以前の1990年代初頭からメディアや思想の流れを丹念に検証。なぜ「嫌韓」「反リベラル」「反マスメディア」などの言説が広がったのかを読み解いた。

 元編集者で現成蹊大教授の著者は起点として雑誌「SAPIO」が右傾化していった流れに注目。従軍慰安婦問題を軸に両国あるいはメディアで反発する過程で嫌韓が定着していく様子を分析した。

 ネット通信では90年代半ばからアングラ的な掲示板で右派的な議論が活発化する。背景には社会で安定した境遇の「リベラル市民」への反発があった。意外な事実も明かされる。2000年代初頭の掲示板では日韓で歴史議論が熱く交わされた。外交文書などの一次資料からの論争で日本側が「圧勝」する。当初は歴史修正主義ではなく反権威的な主知主義だったのだ。だが、次第に反知性主義に駆逐されていったのは残念だ。

 保守やリベラルなど思想の歴史も参照しつつ、膨大な資料から公平な視線で分析した本書の功績は大きい。(青弓社、3000円)

読売新聞
2019年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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