日本人は右傾化したのか 田辺俊介編著

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日本人は右傾化したのか

『日本人は右傾化したのか』

著者
田辺俊介 [著]
出版社
勁草書房
ISBN
9784326351794
発売日
2019/09/14
価格
3,300円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

日本人は右傾化したのか 田辺俊介編著

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 若者批判の意味でしばしば使われる「右傾化」を、その定義に始まり、理論と実証を踏まえ、手堅く分析する。

 まず、純化、愛国、排外、という三つの要素によって作られる「ナショナリズム」の強まりとして位置づけた上で、10年前から3回行った調査に基づき、10人の社会学者が、具体的な問いを考察する。

 たとえば、安倍政権の長期化を支える自民党への投票は右傾化によるものなのか、という問いには、確かにその影響が認められる、と答える。とりわけ2年前の総選挙において、中国人と韓国人だけではなく、フィリピン人などに対しても否定的な有権者は、自民党に票を投ずる割合が高くなっている。

 こうした中韓への排外主義は、リベラル派の主張ととられる脱原発志向についても反対する傾向を持つ。他方で若者に多い原発支持は、経済成長に重きを置くからであり、それは権威を重んじる意識からくる。つまり、若者たちの間にいま起きているのは「右傾化なき保守化」だという。

 その先に待ち受ける日本の姿を考え、話し合い、行動するための資源となる一冊だ。(勁草書房、3000円)

読売新聞
2019年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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