益田ミリ著 「かわいい見聞録」
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
今年の夏も酷暑だった。秋になったら続けざまの台風で大きな被害が出た。寝付かれない夜が続いた。そこで益田ミリさんの本だ。疲れた心に滋養と休息を与えてくれるコミックエッセイである。
本書のテーマは「かわいい」だが、世間によくある「可愛(かわい)い~」というフレーズとは目の付けどころがちょっと違う。たとえば「小学生のかわいい下校シルエット」。ミリさんは「下校中の小学生はかわいい。登校中より断然かわいい」と言う。たとえば「輪ゴムたちのかわいい声」。輪ゴムはわかる。カラーの輪ゴムはきれいですよね。でも「かわいい声」とは? 本書を読んでナルホドと膝を打ってください。
本書にそそられて、わざわざちょっと遠くの喫茶店に行った。おめあては、かわいいジオラマ感のあるプリン・ア・ラ・モード。そう、私もプリン・ア・ラ・モードが平たいお皿で出てくるとがっかりするんです。高床式でなくっちゃね!(集英社、1250円)
評・宮部みゆき