仕事が速くてミスのない人の思考整理術=「メモ」に関する3つのライフハック
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
アメリカのコンサルタント会社、オーダー・フロム・カオスが調べたデータに「ビジネスパーソンが仕事中に探し物に費やす時間は、1年に平均約150時間」というものがあります(『気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ』<リズ・ダベンポート著・草思社>』)。(まえがき」より)
『仕事が速くてミスがない人は机に何も置かない。』(中野清人 著、総合法令出版)の冒頭には、上記のような記述があります。
1日8時間労働だとしたら20日弱。そう考えると、探し物をする時間がいかに無駄であるかがわかります。
しかもその一方には、探し物に余計な時間を使わず、効率的に成果を挙げているビジネスパーソンもいるのです。
優秀なビジネスパーソンに共通しているのは、デスクや身の周りがきれいに片づいていること。当然探し物をすぐに取り出すことができ、何か作業をするときにもすぐ始められます。整理されていれば、資料やモノが紛失することもありません。ミスも少なくなります。
また、モノを片づける思考はアイデア思考やスケジュール管理にも役立ちます。身の回りが片づいている人は、生産性も高いのです。(まえがき」より)
そこで本書では、職場のデスクや身のまわりを片づけるさまざまな方法や、仕事(タスク)の整理、果ては仕事をするうえでの思考の整理までを解説しているわけです。
きょうはそのなかから、メモのコツを明かした第4章「『書く』で仕事がうまく回る」に焦点を当ててみたいともいます。
A4用紙1枚にメモをまとめる
1日のメモは1枚のA4用紙にまとめるといいそうです。手帳や付箋を使うことに慣れていると最初は少し抵抗を感じるかもしれませんが、試してみると意外なほどの利便性を実感できるのだとか。
いうまでもなく、必要なのはA4用紙1枚だけ(再利用の裏紙でもOK)。
そこに電話で聞いた内容やアイデアなど、いろいろなことを1日分のメモとしてまとめるという方法です。
メモ用紙を何枚も使うとゴミが増えることになり、どこになにを書いたのか忘れてしまう可能性もあります。
しかし1枚にまとめれば、そういった危険性が排除できるわけです。しかも手帳にはさんだり、シャツやジャケットのポケットに入れておけるなど、持ち運びにも便利。
なお伝言や資料作成など、メモした内容への対応が済んだら、斜線を引いたりチェックマークをつけたりして、対応済みであることがきちんとわかるようにすることも大切。
そして、アポイントの予定など先の事柄に関するメモは、手帳やパソコンに書き写しておく。そうすれば、やり残したことがないか一目瞭然となります。
そして1日の最後には、その1枚をスキャンしてデータ化しておくと便利。そうすれば、あとで見返すことが必要になった場合のための保険となり、物理的なスペースもとらないからです。
そしてデータ化したら必ず廃棄。そうした流れを習慣づければ、片づけることやモノを減らすことにもつながるわけです。(134ページより)
「書かない」メモを上手に活用
メモは書き込むことだけではなく、ちょっとしたアイデアや工夫次第で簡単に記録を残すことが可能。
たとえば打ち合わせに使えそうなお店の名刺や、話のネタになりそうな新聞、雑誌の切り抜きなど、すでに形になっている「紙の情報」は、そのままメモ帳に貼ってしまえばいいということ。
サイズが大きい場合は縮小コピーし、2つ折りにすればきれいに貼りつけられます。
またスマートフォンも、メモを取る際に活用できるはず。会議で使用したホワイトボードや社内での視察時の様子などは、そのまま写真に撮っておけばいいということ。
そうすれば、ことばでは表現しづらい商品の形状や現場の状況などを記録できますし、かかる時間もほんの一瞬。時間を大幅に短縮できるのです。
さらに会議などの発言を記録する際には、ICレコーダーや、スマホの録音機能を積極活用すべき。ことばを正確に記録できるため、あとで聞き返すことができますし、話にじっくりと耳を傾けることができるからです。
加えて、暗い場所にいるときや両手がふさがっているときには、声でメモできるというメリットもあります。
実際に手書きすることには「手を動かして覚える」というメリットがある一方、転記ミスが起こる可能性も。
そこで、できるだけ正確に記録するためにも、状況に応じてメモの手段を使い分けるべきだということです。(136ページより)
メモは保管、整理して見返す習慣を
メモする目的は、あとで見返すこと。メモや付箋を残したことに満足し、そのまま放っておいては意味がないわけです。
そこで、有効に活用するため、メモを定期的に見返す習慣をつけることの重要性を著者は強調しています。そのために大切なのは、メモを保管、整理すること。
保管に関しては、そのメモが「一時的なもの」か「とっておくもの」かを判断することが重要。
代表的な「一時的なもの」は、「やることリスト」や緊急要件のメモ。不要になるまで読み返すもので、ある期間を過ぎたら捨ててしまってもかまわないそうです。
一方、後者の「とっておくもの」に入るのが備忘録やアイデアなど。
一時的なものとくらべて読み返す頻度は低くなるものの、あとあと必要になってくるため、長期間保存することを意識し、捨てないようにしっかり保管することが大切。
次に忘れるべきでないのは、数あるメモのなかから探したいものを見つけるために、整理する習慣をつけること。
すでに必要のなくなった内容を残しておくと、大事な記録が埋もれてしまい、メモの検索性をダウンさせることになってしまいます。
それでは結果的に、仕事の効率を下げてしまう危険性があるわけです。
コツは、週に一度や月に一度と期間を決めてメモを見なおすこと。そのタイミングで、処理したにもかかわらず捨て忘れていた「やることリスト」を破棄するのです。
なお、「とっておくもの」については、あとから改めて、気になったことなどを調べたりすることも忘れずに。
そうした作業を継続できれば、やがて書きためたアイデアが企画書に発展するかもしれないからです。(140ページより)
モノや思考を整理することによって仕事のスピードが上がれば、自ずとそのクオリティも成果も上がるはず。
本書を活用して、日常生活をより快適なものにしたいところです。
Photo: 印南敦史
Source: 総合法令出版