幕末最大のベストセラーといわれる「日本外史」。頼山陽が著した歴史書で、尊王攘夷運動に大きな影響を与えた。その山陽は、明治に入ると天皇中心の国家づくりに結びつけられ、昭和6年には没後100年の催しが首相出席のもとで盛大に開かれる。
本書は、戦争への道を進む近代日本の歩みの中で、山陽の評価の変遷を丹念に掘り起こした頼山陽論。そこに浮かび上がるのは、時の政治に翻弄される姿だ。
山陽と、彼が称賛した楠木正成に関する指摘も興味深い。両者は戦時国家の国威発揚に利用された末、戦後は消し去られてしまうのである。(南々社・2700円+税)
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2019年11月10日 掲載
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