日本人義肢装具士が見た大虐殺を経たルワンダのいま

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日本人義肢装具士が見た大虐殺を経たルワンダのいま

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 1994年、アフリカのルワンダで大虐殺(ジェノサイド)が起こった。フツ族によるツチ族の虐殺で、百万人もの死者が出た。男も女も大人も子どもも、赤ちゃんでさえ犠牲者となった。生き残っても、手足を切り落とされたり地雷で吹き飛ばされたりして障害を負った人が何十万人と残された。

 ルダシングワ真美さんは義肢装具士である。マラリアによって足が不自由になったルワンダ人の夫、ガテラさんのため、日本の義肢製作所に弟子入りを志願した筋金入りの根性の持ち主である。

 その修業中にジェノサイドが起こった。ツチ族の夫はケニアに逃れて無事だったが、ルワンダに来てほしいという願いを受けいれ、95年、真美さんはその土を踏んだ。

 紛争の跡が色濃く残る現地で真美さんが見たのは、数え切れないほどの肢体不自由者だった。地面をはうようにして移動する両足のない男性、顔に刃物の跡が残る若い女性。手りゅう弾が投げ込まれ、避難していた多くの人が殺された教会は、腐った死体がそのまま放置されている状態だったという。

 二人はルワンダの首都キガリで義肢製作所を設立することを決意する。しかし国の経済はボロボロで援助は望めない。そこで真美さんは一度日本に戻り、96年にルワンダの活動を支援するチーム「ムリンディ/ジャパン・ワンラブ・プロジェクト」を立ち上げ、寄付金と使わなくなった義足を集め始めた。

 義肢によって動けるようになった喜びのエピソードがたくさんあるなか、仕事に就けず、義足を外して物乞いするしかない母親の例もあった。徐々に政権が安定し治安も回復してくると、パラリンピックの選手を輩出するようになってきている。

 本書は総ルビで、小学生でも読むことができる。虐殺の歴史を含め、家庭で、学校で話し合ってほしい一冊である。

新潮社 週刊新潮
2019年11月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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