昭和の少女が描く 令和の少女時代小説

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大江戸少女カゲキ団(一)

『大江戸少女カゲキ団(一)』

著者
中島要 [著]
出版社
角川春樹事務所
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784758442954
発売日
2019/10/12
価格
704円(税込)

書籍情報:openBD

中島要の世界 新シリーズ「大江戸少女カゲキ団」開幕!!

[レビュアー] 中島要(作家)

読者は『大江戸少女カゲキ団』というタイトルを見て、どういう漢字を思い浮かべるだろうか。

頭に「少女」とついているから、やっぱり「歌劇団」?

それとも、意表をついて「過激団」とか。

実はこの作品、角川春樹事務所の営業担当、M氏の一言から生まれた。

あれは『白に染まる 着物始末暦(九)』の書店訪問をしていた、二〇一七年の夏のこと。私は次のシリーズの内容について悩んでいた。

初めての文庫書き下ろしシリーズ、「着物始末暦」は幸いにして好評だった。次回作はよりいっそう面白いものにしたい。だが、自分の得意な題材を選べば、話が似通ってしまう恐れがある。

そこで書店訪問に同行していたM氏に「どういう作品が読みたいか」と尋ねたところ、

――中島さんが書いた宝塚の話を読みたいです。

予想の斜め上をいく答えに、私は唖然とした。

確かに、私は宝塚歌劇団が好きである。その日も訪問先の書店員さんと、自著の宣伝そっちのけで「男役、カッコイイよねぇ」なんて話をしていた。M氏はそういう姿を見て、「宝塚の話が読みたい」と言ったのだろう。

しかし、私は時代小説作家である。宝塚歌劇団は江戸時代どころか、明治にも存在しないはずだ。引きつった顔で「冗談ばっかり」と言おうとして―私は突如、閃いた。

江戸時代の町娘は、男ばかりの歌舞伎に熱狂していた。人気役者の舞台衣装と同じ柄の着物を誂える娘たちの中には、夢中になっている相手の真似をしたがった娘もいただろう。そういう少女たちが親に隠れて、人前で芝居をしようとしたら……。

そもそも歌舞伎の始まりは、男装で踊ったという出雲の阿国ではないか。勢いづく私の脳内で、助六さながらの黒小袖を着て見得を切る少女の姿が浮かび上がった。

歌舞伎の語源、「傾く」の意味は、「勝手気ままな振る舞いをする」だとか。

片仮名で書けば、カブキとカゲキはよく似ている。ならば、勝手気ままにカゲキを書いても許されるに違いない。

昭和の少女漫画と少女小説を読んで育った私は、訳あって男装をする不遇の少女が大好きだった。M氏に心から感謝しつつ、「主人公は背の高い男役がいい」「相手役は大店のお嬢さん」など、構想は一気に広がっていく。担当編集者も乗り気になり、いつも苦労するタイトルだってすぐに決まったほどである。

ちなみに『大江戸少女カゲキ団』の「カゲキ」は、「歌劇」でも「過激」でもない。正解が気になる方は、ぜひ『大江戸少女カゲキ団(一)』をお読みください。

角川春樹事務所 ランティエ
2019年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

角川春樹事務所

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