「読んでから見る」派の読者のためのミステリ映画原作小説3選

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  • 屍人荘の殺人
  • 記憶屋
  • スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼

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シリーズ累計50万部超!! 新人作家の超話題ミステリ

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

「読んでから見るか 見てから読むか」とは、かつて一世を風靡した角川映画のキャッチコピーだが(作品は、森村誠一原作の『人間の証明』)、それから40年以上を経た今も、この二択に悩む人は少なくない。今回は、「読んでから見る」派の読者のために、12月以降あいついで公開されるミステリ映画3本の原作小説を紹介しよう。

 トップバッターは、本格ミステリの公募新人賞・鮎川哲也賞を射止めたデビュー作にして、主要ミステリランキング4冠+本格ミステリ大賞を獲得した今村昌弘の超話題作『屍人荘の殺人』。続編の『魔眼の匣の殺人』と合わせてシリーズ累計50万部を超えたというからすさまじい。ぶっ飛んだ設定とは裏腹に、中身は端正な本格だが、12月13日公開の映画版(木村ひさし監督)は思いきりコメディ方向に振っている(浜辺美波演じる美少女名探偵・剣崎比留子は必見)。そのギャップを楽しむためにも、ぜひ原作からどうぞ。文庫版はこの9月に出たばかり。

 来年1月17日に公開される『記憶屋 あなたを忘れない』(平川雄一朗監督、山田涼介・芳根京子主演)の原作は、2015年の日本ホラー小説大賞・読者賞に輝く織守きょうや記憶屋』。こちらは、忘れたい記憶を消してくれるという都市伝説のような怪人を核にした切ない青春ホラーの佳作。やはりシリーズ化されて、『II』『III』と出たあと、1作目の前日譚にあたる短編3本を収めたスピンオフ作品集『記憶屋0』が、11月21日に同じ角川ホラー文庫から刊行予定。

 最後の1冊は、一昨年、宝島社『このミステリーがすごい!』大賞の「隠し玉」(編集部推薦作)として刊行されて大ヒットした志駕晃『スマホを落としただけなのに』の続編、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(宝島社文庫)。前作の映画版は、北川景子をヒロイン役に起用して20億円近い興収をあげたが、今回は、白石麻衣を新たなヒロイン役に迎え、同じ中田秀夫の監督で来年2月21日公開予定。前作に続き、千葉雄大と成田凌が主演する。

新潮社 週刊新潮
2019年11月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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