【文庫双六】山田洋次監督も映画化を望んだ少年探偵――川本三郎

レビュー

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名探偵カッレくん

『名探偵カッレくん』

著者
アストリッド・リンドグレーン [著]/エーヴァ・ラウレル [イラスト]/尾崎義 [訳]
出版社
岩波書店
ISBN
9784001141214
発売日
2005/02/16
価格
770円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

山田洋次監督も映画化を望んだ少年探偵

[レビュアー] 川本三郎(評論家)

【前回の文庫双六】二人の娘と息子に本書を捧げた「ライス」――野崎歓
https://www.bookbang.jp/review/article/592633

 ***

 クレイグ・ライスの『スイート・ホーム殺人事件』では三人姉弟、とりわけ十二歳の次女エイプリルが探偵となって活躍する。

 子供が探偵役になるミステリは案外多い。子供は探偵に憧れる。

 そもそもコナン・ドイルのホームズものでは、名探偵を手助けするベイカー街遊撃隊という町の少年たちが活躍する。

 それを受けて江戸川乱歩が少年探偵団を創り出したのは御存知の通り。

 少年少女向きの読み物にも子供たちが探偵となるものが数多い。

 ケストナーの『エーミールと探偵たち』、C・D・ルイスの『オタバリの少年探偵たち』、ドナルド・ソボルの『少年たんていブラウン』などが思い浮かぶ。

 女性作家も書く。スウェーデンのアストリッド・リンドグレーン(一九〇七―二〇〇二)の『名探偵カッレくん』。

 スウェーデンの小さな町に住む十三歳のカッレくんは名探偵に憧れている。

 しかし、静かな田舎町では事件らしい事件は起らない。隣りに住むお転婆のエーヴァ・ロッタや親友のアンデスとサーカスごっこをしたり、敵対するグループと喧嘩をしたりして気をまぎらわせている。

 ところが、ある日、町にエーヴァの親戚というエイナルおじさんが現われる。どこか挙動不審。

 しかも、そのあとおじさんを追ってあやしい二人組の男がやってくる。

 何かある。カッレくんの探偵熱が騒ぎ出す。そしてみごと事件を解決する。

 一九四六年の作。平和な町に謎めいたおじさんがやってくるという設定はヒッチコックの『疑惑の影』(四三年)を思わせる。

『名探偵カッレくん』は好評でのちシリーズ化された。岩波少年文庫版には山田洋次監督が文章を寄せている。それによれば山田監督は若い頃、これを映画化しようと思ったという。

 なおこの十二月に作者の若い頃を描いた映画『リンドグレーン』が公開される。

新潮社 週刊新潮
2019年11月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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