潜入ルポ amazon帝国…横田増生著 小学館

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潜入ルポ amazon帝国

『潜入ルポ amazon帝国』

著者
横田 増生 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093801102
発売日
2019/09/17
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

潜入ルポ amazon帝国…横田増生著 小学館

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

 ネット通販大手アマゾン。創業時は書籍だけだったが、その後食品や衣類など多様な商品に展開、巨大な企業になった。そんなアマゾンジャパンの配送センターに2002年に潜入取材したジャーナリストが再び挑んだ。ただし、今回の取材対象は配送センターだけではない。物流、海外、納入業者、レビュアーなど多角的な視点で同社の実情に切り込んだ。

 配送センターの実態は過酷だ。個々の電子端末に示された商品を「東京ドーム4個分」という広大な棚から選び出さねばならない。移動距離も「15秒」などと表示されて休む暇なく続き、1日の歩行距離は20キロにも及ぶ。労働者の突然死も複数起きているが、同社の対応は「木で鼻を括(くく)ったような」ものでしかない。

 著者はイギリス、ドイツ、フランスで同じようにアマゾンを取材した記者にも実情を尋ねに行く。最新機器が現場に導入されたイギリスでは、歩く距離は減ったが、狭い場所で「休む間もなく屈伸運動」を続けることに。仏ジャーナリストは「アマゾンで働くことの最大の問題は、労働者が次々と身体や精神を病んでいく点」だと指摘する。

 再び日本。アマゾンを通して販売するマーケットプレイスという制度では、アマゾンの意向で突然アカウントが閉鎖されることもある。そんな経験のある納入業者は「無実の罪を着せられ、そのまま死刑判決を受けるような気分」と語っている。

 一方、そんな商品のレビューでは、実際に使ったことのない「フェイクレビュー」が幅を利かし、「まじめに商売をしている出品者を苦しめて」いる。そんな不届き者は罪悪感なく規約違反を著者に語る。

 どの章でも取材対象者が多く、細かな証言からアマゾンという巨大企業の恐ろしいまでの利益第一主義が浮かび上がってくる。これがグローバル企業トップの怖さとも感じられるが、同時に本書では、著者のふてぶてしくも取材を面白がる姿勢も伝わってくる。

読売新聞
2019年11月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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