竹迫祐子編 「初山滋 永遠のモダニスト」

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初山滋

『初山滋』

著者
竹迫 祐子 [編集]
出版社
河出書房新社
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784309750408
発売日
2019/08/23
価格
2,090円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

竹迫祐子編 「初山滋 永遠のモダニスト」

[レビュアー] 岸本佐知子(翻訳家)


初山滋

 私は幼稚園が嫌で嫌で、登園拒否寸前だったが、何とか耐えられたのは、毎月配られる童話雑誌が楽しみだったからだ。なかで一人だけ、明らかに他と違う絵を描く人がいた。くるくると植物の蔓(つる)のような線、不思議にデフォルメされた人や動物、あたたかな色彩。子供心に激しく魅せられ、はつやましげる、という名前が胸に刻みつけられた。

 この本を読んで、その「明らかな違い」の理由がわかった。下町育ち。染物職人への奉公。日本画家や歌舞伎役者との交流。キュビズムや印象派との出会い。あの前衛的でモダンで、でも和の優しさもあり、どこか「装飾」とか「グラフィックデザイン」の感じのする作風は、そうした背景から生まれていたのだ。

 大のお洒落(しゃれ)好きで、お百姓風の服に頬っかむりをして、顔に茶色のシミまで描き込む凝りようだった、なんていう逸話も最高だ。(河出書房新社、1900円)

読売新聞
2019年11月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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