[本の森 仕事・人生]『ツナグ 想い人の心得』辻村深月/『殺し屋、続けてます。』石持浅海

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ツナグ 想い人の心得

『ツナグ 想い人の心得』

著者
辻村 深月 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103283232
発売日
2019/10/18
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

殺し屋、続けてます。

『殺し屋、続けてます。』

著者
石持 浅海 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163911151
発売日
2019/10/23
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

[本の森 仕事・人生]『ツナグ 想い人の心得』辻村深月/『殺し屋、続けてます。』石持浅海

[レビュアー] 吉田大助(ライター)

 極めて特殊な「仕事」を題材にした物語の、続編をどう書くか。読者も作者も特殊性に慣れてしまい、マンネリに陥ってしまいかねないのではないか……という不安は、シロウトの予断だった。辻村深月の出世作『ツナグ』の、実に九年ぶりとなる続編『ツナグ 想い人の心得』(新潮社)は、前作とは異なる「仕事」の状況設定をバリエーション豊かに表現。そのうえで、「続編だから書けること」を上乗せしている。

 依頼人からリクエストを受け、たった一度だけ、死者との再会を叶える――。前作では高校生の少年・歩美が、使者(ツナグ)の役割を祖母から受け継いだ直後の五つの情景が描かれた。続編では第一編冒頭でいきなり、別の使者が物語に登場する。依頼人は、「代理」でやって来たと言う。「俺の友達が、会いたいと思ってるはずの人に会わせてもらえないか」。新鮮な展開が目白押しだが、前作を読んでいるならば衝撃と感動をより濃く味わえる展開が、終盤で待ち構えている。

「歴史上の人物に会いたい」という依頼の顛末が楽しい第二編、「なぜ今このタイミングで使者に会おうと思ったのか?」という依頼人の動機に注目した第三編もグッときたが、第四編「一人娘の心得」の状況設定は格別目を見張った。前作から七年の歳月が経ち、歩美は社会人になっている。おもちゃメーカーの企画担当者としての「仕事」、そこでの出会いが、使者の「仕事」と絡み合い始めるのだ。しかも依頼人は……存在しない。どういうことかは、読んで確かめてみてほしい。ラストの一編は前作同様、死者と依頼人の再会に影響を受けて我が身を振り返る、歩美自身の選択の物語。「想い人や、大事な人たちと、同じ時間に存在できるということは、どれぐらい尊いことか」。シリーズを象徴するメッセージが刻み込まれ、快感の展開が連鎖する。完璧なエンドマークだ。でも、さらなる続編が書かれることを祈りたい。

 殺し屋とは、労働形態を取り出してみれば、非正規雇用の派遣仕事。石持浅海『殺し屋、続けてます。』(文藝春秋)は、安定した本業とは別に、副業として殺し屋稼業を営む男が主人公の連作ミステリーだ。ミスをしないためには、まるで探偵のように標的の身辺調査を徹底し、生活パターンを完全に把握する必要がある。その過程で、不可解な「日常の謎」と出合ってしまう――という流れは今回も健在。そのうえで新規導入されたアイデアは、もう一人の殺し屋を登場させることだった。今読み進めている短編はどちらの殺し屋の話なのか? 一文で視点が裏返る感触は、続編にしか出せない面白さだ。今後はきっと、殺し屋二人の直接対決が描かれることになるだろう。その時は間違いなく、肉弾戦ではなく頭脳戦だ。第三巻のタイトルがどうなるかなんてことも想像しながら、楽しみに待ちたい。

新潮社 小説新潮
2019年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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