「脳卒中は予防できる!!」吉村紳一(著)『脳卒中をやっつけろ!』

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脳卒中をやっつけろ!

『脳卒中をやっつけろ!』

著者
吉村紳一 [著]
出版社
三輪書店
ISBN
9784895906241
発売日
2018/03/23
価格
1,980円(税込)

「脳卒中は予防できる!!」吉村紳一(著)『脳卒中をやっつけろ!』

[レビュアー] 中村春基(一般社団法人日本作業療法士協会・会長)

 本書は「皆さん、こんにちは! 兵庫医科大学の吉村紳一です」から始まり、「最後までお読みいただきありがとうございました。本書が皆さんとご家族の脳卒中予防に役立つことを心から願っております」と結ばれている。本書のテーマは「脳卒中予防」である。

 まず、白衣姿の吉村先生と4カットのマンガが飾られた表紙が印象的だが、このマンガは各章の冒頭に挿入されている。「おわりに」では、本書執筆の苦労話とともに、「マンガ」を採用した秘話が記されている。私もその仕掛けに導かれながら3時間ほどで読み終えた。病気・薬・手術等を解説した医学書はとっつきにくくなりがちであるが、本書にそのような敷居の高さはない。語弊があるかもしれないが、読後は脳卒中をより身近に感じることができた。読者はきっと、本書を読み進めるうちに「脳卒中をやっつけろ!」、「脳卒中は予防できる!!」と思われるだろう。この読みやすさの仕掛けは細部にわたっている。

 本書は四六判で、難解な医学用語を極力少なくし、10のコラムと注釈でわかりやすさを補っている。また、各章冒頭の「マンガ」が、実に日常ありそうなエピソードのため、その後の本文の医学の内容と日常生活を結びつけてくれる。まさに「マンガ」が本書の名ガイド役を担っている。ちなみに、マンガの原案も吉村先生によるものだそうだ。

 さて前置きが長くなったが、本書の内容を紹介する。

 本書は、吉村先生考案の「脳卒中をやっつけろ五か条」で構成され、「マンガ」には脳卒中の理解をうながすエピソードが描かれている。たとえば、「その一 敵を知り」の章では、運動会で孫の応援にきていた「吉田のおじいさん」が気分を悪くし、周囲の人が「熱中症かしら」と言うのを、たまたま居合わせた医師が脳卒中と診断し、救急車で病院へ。血栓を溶かす点滴では改善がみられないのでカテーテル治療で、おじいさんは大丈夫であったというストーリーである。それを受け本文では、「脳卒中とは何か」、「どんな種類があるか」、「どんな症状があるのか」、「もう一歩踏み込んで」と詳しい解説があり、「一時的な症状も警告サイン!」(いわゆるTIA)、「突然の頭痛にCT検査は必要か」のコラムで知識を補完している。

 続く「その二 己を知れ」では自分の身体を知る重要性が説かれ、各種検査法が紹介される。「その三 危うきを避け」では脳卒中の危険因子について、「その四 薬を煎じ」では、その三で取り上げた危険因子のそれぞれについての薬物治療が解説してある。この章は薬の名称が多く登場し、難しく思われるかもしれないが、ワルファリンと食事との関係等、薬を身近に感じることができるよう説明に心が配られている。「その五 術を使え」では、手術をテーマに、未破裂脳動脈瘤の治療の基本編として開頭手術(クリッピング術)、血管内治療(コイル栓術)、応用編では、大型・巨大脳動脈瘤の治療(親動脈閉塞術・血管内治療)、脳動静脈奇形、頸動脈狭窄症、頭蓋内動脈狭窄症、もやもや病を説明してある。なお、コラム(9)「自分が手術を受けるとしたら!?」では、興味深い本音トークが語られている。答えが知りたい方は、本書を読んで確認してみてほしい。一般市民が必要な情報を得たいと思ったとき、受けたい治療があるとき、どうすればいいのか。医療情報全般へのアクセスのしやすさについて、さりげなく再考を問うている。

 繰り返しになるが、本書は脳卒中の基本中の基本をわかりやすく解説した良書であることは間違いない。多くの一般市民、医療関係者が本書を読み、自らの生活を振り返り、脳卒中が予防されたらと思う。加えて本書の読者は、きっと身内や知り合いに本書を紹介されるに違いない。

 最後に、吉村紳一先生の今後益々のご活躍を祈念するとともに、次作は「脳卒中と地域医療」をテーマにぜひ、ご執筆をお願いしたい。

作業療法ジャーナル
第52巻6号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

三輪書店

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