雅楽のコスモロジー…小野真龍著

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雅楽のコスモロジー

『雅楽のコスモロジー』

著者
小野 真龍 [著]
出版社
法藏館
ジャンル
哲学・宗教・心理学/仏教
ISBN
9784831862563
発売日
2019/10/10
価格
2,420円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

雅楽のコスモロジー…小野真龍著

[レビュアー] 加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

 キリスト教の音楽は、ユダヤ教やイスラム教では演奏しない。約1400年の歴史をもつ雅楽は、仏寺でも神社でも、宮中でも演奏する。神仏習合、という単純な話ではない。著者は言う。

 「雅楽の背後には、カミ・ホトケ・スメラミコトがせめぎ合って織り成した歴史の壮大な宗教的空間が広がっているのです」

 奈良時代の大仏開眼(かいげん)供養会は、日本雅楽の成立前夜祭とも呼ぶべき一大イベントだった。天皇の統治を仏法で権威づける意図があった。が、皇統神話の血統主義と仏教救済の平等原則の違いは大きい。仏法での権威づけは、かえって王法の権威を弱めるという矛盾。道鏡事件や神仏分離は矛盾が顕在化した例だ。日本の神仏は「習合」はしても「融合」はしない。国家を含めたせめぎ合いは現代も続く。

 雅楽の宗教性と、その背後にある日本人の霊性を説き明かし、日本史の機微を浮き彫りにする著者は、聖徳太子以来の伝統をもつ天王寺楽所(がくそ)の雅楽の伝承者であり、京大の博士学位をもつ学者であり、浄土真宗の住職でもある。知的でスリリングな本だ。(法蔵館、2200円)

読売新聞
2019年11月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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