年間10万のクリーニング代節約も。洗濯ブラザーズが教える正しい洗濯術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『日本一の洗濯屋が教える 間違いだらけの洗濯術』(洗濯ブラザーズ 著、アスコム)の著者である洗濯ブラザースとは、横浜で「LIVRER YOKOHAMA(リブレ ヨコハマ)」というクリーニング店を経営するかたわら、劇団四季、シルク・ドゥ・ソレイユ、クレイジーケンバンドなど国内外の有名アーティストの衣装クリーニングを手がけているという集団。
本書においてはそのような実績を軸として、「クリーニングのプロだから知っている、本当に正しい洗濯のしかた」を明かしているのです。
まずはじめに知っていただきたいのは、「あなたがクリーニングに出している洗濯物のほとんどは、自宅でキレイに洗える!」ということです。
ボクたちの洗濯術を使って、自宅で洗えるようになり、年間10万円近くのクリーニング代を節約できた、という方がいます。(「はじめに」より)
クリーニング屋でありながら「自宅でキレイに洗える!」などと、自分たちのお客様を減らすようなことをあえて言うことに疑問を感じるかもしれません。
しかし、それには理由があるようです。
つまり、「自宅で洗えないもの」もやはりあるということ。あるいは、「大切にしている衣類だからプロに洗ってほしい」というものもあるでしょう。
つまり、プロにしか対処できないそれらをキレイにすることが、自分たちの仕事だと考えているというのです。
洗濯ブラザーズの長男である茂木貴史氏は、オーガニックコスメの輸入業に携わっていたという人物。オーガニックという視点から、服と肌にやさしい洗濯方を追求してきたのだそうです。
次男の康之氏は、テキスタイル会社やクリーニング機械メーカーを経て、2007年に「LIVRER YOKOHAMA」を設立。
そこに友人の今井良氏が“三男”として加わり、本格的に活動を開始したのだそうです。
第2章「もう間違えない! 洗濯ブラザーズ式 ちょっとの『準備』で臭いもシミもみな落ちる」のなかから、3つのポイントをピックアップしてみましょう。
洗濯物は4つに分類して洗う
洗濯物を分類することは、非常に大切なステップ。分類せずに同じ洗い方をしてしまうと、ベストな仕上がりにならないというのです。
とはいえ家庭では、4つの分類で充分だと断言しています。
1、 ふだん洗い
日常づかいの服や、一般的な下着・肌着、タオルなど。
2、 ハードな汚れ
泥汚れ、食べこぼし、黄ばみや黒ずみなど、眼に見えるほどの汚れがあるもの。
3、 デリケート素材
ニット、レースなど、繊細な記事や、複雑な形・飾りのあるデザインのもの。とにかく、大事にしたいもの。
4、 色もの
濃い原色の色柄もの。すでに洗ったことがあり、色落ちしないと確信できるものはほかの洗濯物と一緒に洗って構いません。
(93ページより)
それぞれの洗い方のコツを知れば、たったこれだけの分類で仕上がりが見違えるように変わってくるそうです。(92ページより)
洗濯物はメッシュタイプの洗濯カゴへ
「脱いだ服をどうするか」も大切。いい洗濯は、洗う前から始まっているというのです。具体的にいうと、洗濯機のなかに洗濯物を入れておくのは問題外。
なぜなら、においの原因になるモラクセラ菌がという雑菌が、どんどん増えてしまうから。
部屋干し臭、生乾き臭、乾いてしばらくしてからにおう戻り臭などは、すべてモラクセラ菌のしわざ。
この菌はフンのようなものを出すので、それがにおいいの元凶になってしまうということです。
そして、そんなモラクセラ菌の栄養になるのが水分。湿気の多い洗濯機のなかに汗で湿った衣類を入れておくと、モラクセラ菌を活発にしてしまうわけです。
菌を増やさないためには、通気性のいい環境で保管するのがいちばんです。洗濯カゴに入れましょう。
しかも、通気性がいいメッシュタイプがベストです。こんな簡単なことで、菌の繁殖がぐっと抑えられます。(95ページより)
とはいえ、通気性のいい洗濯カゴだからと安心して、何日もほったらかしにするのはNG。洗濯物は、脱いでから24時間以内に洗うのがベスト。
モラクセラ菌によりにおい対策という意味でも、黄ばみ対策としても、これが最重要ポイントだといいます。(94ページより)
ふだん使いの洗剤は、「弱アルカリ性」の「液体洗剤」を
著者がお客様に「どんな洗剤を使っていますか?」と尋ねると、返ってくる答えの大半は「汚れ落ちがいいもの」「香りがいいもの」「肌にやさしいもの」「とにかく安いもの」など。
パッケージに大きく書かれているキャッチコピーを参考にしている人が多いわけです。
でも、それは間違いで、洗剤を選ぶ際にはまず、裏面の成分表示に記載された小さな文字に注目すべき。
そこにある「液性」という項目に「弱アルカリ性」や「中性」と書かれており、それが重要だというのです。
中性はPH6.0~8.0以下、弱アルカリ性はPH8.0~11.0以下。この値が高いほど汚れを分解するパワーがあるということ。また、液体洗剤と粉末洗剤をくらべると、洗浄力が高くなるのは粉末。
ただし洗浄力が高いと、それだけ生地への影響も強くなってしまうもの。そうしたことを考慮すると、次のように使い分けるべきだといいます。
① ふだん洗い=弱アルカリ性の液体洗剤
② ハードな汚れ=粉末洗剤
③ デリケート素材=中性の液体洗剤
④ 色もの=中性の液体洗剤
(97ページより)
なお粉末洗剤は、生地や肌に影響を与える漂白剤や、蛍光増白剤が入っていないものが安心だそうです。(96ページより)
洗濯ブラザーズの3人はファッションが大好きで、お気に入りの服は生地を傷めず、いつまでも新品のような状態で着たいと考えているそうです。
それは、多くの人が持つ思いとも共通したものだといえるでしょう。
そういう意味では、ファッションが好きな人にとって必携の一冊であるといえるかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: アスコム