【聞きたい。】閻連科さん 『黒い豚の毛、白い豚の毛-自選短篇集』

インタビュー

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黒い豚の毛、白い豚の毛

『黒い豚の毛、白い豚の毛』

著者
閻 連科 [著]/谷川 毅 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784309207735
発売日
2019/07/26
価格
3,190円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】閻連科さん 『黒い豚の毛、白い豚の毛-自選短篇集』

[文] 海老沢類(産経新聞社)

 ■中国社会の不条理えぐる


閻連科さん

 現代中国を代表する作家による短編集。この20年ほどの間に発表した9編が収められている。

 「私の場合、長編と比べて短編の数はとても少ない。創作の快感を存分に味わえる長編小説の構造をまず考える習慣があるんですね。でも体力が衰えていくこれからは短編をもっと書いていかないと」と笑う。

 中国の貧しい村の出身で人民解放軍に長く所属した作家らしく、農村や軍隊を舞台にした話が多い。

 運転中に死亡事故を起こした鎮長の代わりに罪をかぶって恩人となろうとする男を描いた表題作は、農村で弱者が生きる辛苦が胸に迫る。軍の新兵が、指導員の巧みな“教育”によって母親よりも軍隊を愛するように導かれていく「思想政治工作」からは軍の不気味さが伝わる。「普通の人には理解できないだろう不思議なことが軍隊には多い。風刺的な一編ですが、現実にもあるかもしれない」

 一方で、キリスト教を信じるようになった老女と隣家の元村長との悲喜劇「信徒」のように、「信仰」をテーマにした作品も並ぶ。

 「どんな小説家も世界を凝視する姿勢を持っている。ある意味、私の人生は世界に対する認識が変化していった結果です。最初は希望を抱くでしょ。ただ、やがて失望し、それが絶望になる。無神論者でも、年齢を重ねれば宗教や信仰的なものに関心を持つようになるのです」

 中国社会の不条理をえぐる寓意(ぐうい)とユーモアに満ちた作品を描き続ける。軍を侮辱したなどとして発禁処分を受けたことも。中国では近年言論への締め付けは厳しくなっている、とも明かすが、動じる様子はない。

 「本が中国国内で出版されなくても、私は全然平気です。今は名前が売れているから、外国など別の所でなら出せる。そして、いろんな人と交流ができるのだから」(谷川毅訳、河出書房新社・2900円+税)

 海老沢類

   ◇

【プロフィル】閻連科

 Yan Lianke 1958年、中国河南省生まれ。人民解放軍に入隊し、80年代から小説を発表。『年月日』で魯迅文学賞、『愉楽』で老舎文学賞。2014年にチェコのフランツ・カフカ賞を受けた。

産経新聞
2019年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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