「地毛なのに黒染め指導」 おかしなルールで縛る日本の教育はこのままでいいのか?

対談・鼎談

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【ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー】100万光年先の日常から、子どもと社会を描く 劔樹人×ブレイディみかこ×瀧波ユカリ

[文] 新潮社


左から劔樹人さん、ブレイディみかこさん、瀧波ユカリさん

子どもを巡るさまざまな疑問や問題は尽きることがない。人種やジェンダー、アイデンティティー、貧富の差など、社会が成熟するに従って価値観がアップデートされていく現代において、私たち子育て世代はどのような目線を持つべきなのか?

現在、イギリスの「元・底辺中学校」に通い始めた息子の日常を通して、大人たちが解決や対応を迫られている問題を炙り出した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が「Yahoo!ニュース | 本屋大賞2019ノンフィクション本大賞」など複数の賞を立て続けに受賞し、大きな反響を呼んでいる。

今回は、その著者であるブレイディみかこさんが、育児体験を綴った『はるまき日記』を刊行している瀧波ユカリさんと、現在2歳になる娘の成長を描いた漫画を連載する劔樹人さんの二人と、学校の校則に対する違和感や教室での前後格差、多様化する社会におけるLGBTQの教育など、それぞれの視点で語り合った。

 ***

瀧波・劔 受賞おめでとうございます。

ブレイディみかこ(以下:ブレイディ) ありがとうございます。賞とかいうガラじゃないんですけど……いただけるものは、ありがたくいただきます(笑)。

瀧波ユカリ(以下:瀧波) この本、最初はタイトルに惹かれて手に取ったんです。読んでみると、自分が関係していない別の国で起きている、でも自分とすごく関係のある出来事だと感じました。書かれている出来事も強烈なんですけど、それと同じくらいブレイディさんの個性が強烈で(笑)。

ブレイディ あ、出てます?(笑)

瀧波 ええ、それに文章も、ものの取り上げ方も、読んだことのない本だったんです。すぐに夫に勧めたんですが、娘も「わたしも読みたい」って。娘は9歳なんですけど。

ブレイディ え? 9歳?

瀧波 はい。夫が「わからないところには線を引いて、あとで調べなさい」って言ったら、こんなふうに赤線だらけに。家族で楽しんでます。

ブレイディ いやあ、うれしいですね。

瀧波 9歳になると、もう共通の本の話ができるんですよ。劔さんのところも、あと7年くらいですよ。

劔樹人(以下:劔) 9歳になれば、もう漢字も読めるんですもんね。

瀧波 うちの娘は世界情勢に興味があるみたいで、NHKが子供向けにやっている世界情勢についての番組を毎週見ているんです。ブレグジットとか、香港のデモとか。最近、親の立つ瀬がどんどんなくなっている(笑)。
 でも、この本も最初はブレイディさんが息子さんに「世の中ってこうなんだよ」って伝えているのが、後半にいくにしたがって息子さんの見方になっていて。息子さん、11歳から12歳になる頃ですよね。本に書かれている1年半の間にものすごい勢いで成長している。

ブレイディ 子どもの成長ぶりを見ていると、いきものってすごいな、と思ったりします。

劔 子どもってすごいという意味では、最終章にグレタさんのことがでてくるじゃないですか。あの章を読んで改めて、子どもたちが見ているものと彼らの意思をちゃんと理解したいと思いました。
 とはいうものの、実はまだ、本全体を通しての感想は言語化しきれていないんです。日本の中にいても差別や分断を感じるようになっていて、自分の中に潜んでいるものを考えていかなければいけないなと思うと同時に、イギリスと日本の教育ってここまで違うのか、自分の子どもが中学生になるまでの間に親として何ができるのか、この子をこの国で育てていっていいのかな、みたいなことまで考えさせられたり……話がまとまらなくてすみません、いつもこうなんです(笑)。

瀧波 たまに「移住」とかで検索している自分がいるという(笑)。

劔 そうそう。日本人の中でも、日本はヤバいと思っている人が多い気がします。まあ、海外は海外で日本より激しい場合もあって、ヤバいわけですが。

ブレイディ そうですよ。

新潮社 波
2019年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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