動物たちが教えてくれた「良い生き物」になる方法…サイ・モンゴメリー著 河出書房新社

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動物たちが教えてくれた「良い生き物」になる方法

『動物たちが教えてくれた「良い生き物」になる方法』

著者
サイ・モンゴメリー [著]/古草 秀子 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784309253992
発売日
2019/10/15
価格
1,925円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

動物たちが教えてくれた「良い生き物」になる方法…サイ・モンゴメリー著 河出書房新社

[レビュアー] 一青窈(歌手)

 外灯のないところで暮らし、驚くほどの謙虚さを当たり前のように備えたネイチャーライターの著者、サイに敬意を持ってこう伝えたい。貴方(あなた)の生き方が正直羨ましいと。

 彼女は、穏やかに信頼を込めて頼ってくれるという贈り物を飼い犬テスから受け取り、一緒ならば歩めない暗闇はなかったと語る。私が子育てにおいて感じた全てを動物と接することで得ていた。心から怒りを追いやり、あちこちで愛を感じていた。オーストラリア奥地に生息するエミューに対しても自分が欲しいのはデータではないと悟り、なによりも、彼らと一緒にいたいだけなのだと語る。

 願わくば見た事のない絶滅危惧種に触れてみたいが、ジャングル体験は辛(つら)い。動物の信頼を得るためには、十分な知識と忍耐が必要で努力を惜しんではならない。その覚悟が私にはないがそれを喜んでやってのけるのが彼女であり、この本にはその冒険の記録と教訓が詰まっている。以前、福岡伸一先生に、“ゴキブリに悲鳴をあげる前に、彼らの方がこの地球に先に現れた大先輩で僕ら人間の方が後からやってきたんだから怖がらないで!”と言われ、目が覚めた事がある。天変地異が起きたときにサバイブできるのは先の生物達(たち)でありサイがいう通り<わたしたちの周囲には助けてくれる教師がいる>のである。生きとし生けるものに敬意を持って接すれば、学ぶ事は山ほどある。

 コオロギが脚で歌い、膝で聴くことも、タコが人間を見分けたり全身の皮膚で味わうことも初耳だった。人間の感情を動物に投影する擬人化ではなく感情は人間だけのものではないとする著者は細心の注意をもって動物の感情を読み解く。

 私たちが豊かに生きるためのヒントは身近な生き物すべてが持ち合わせているということを、この本は明るい希望を持って与え示してくれた。古草秀子訳。

読売新聞
2019年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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