中国で叶えた幸せ 第2回「忘れられない中国滞在エピソード」受賞作品集…段躍中編 日本僑報社

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中国で叶えた幸せ

『中国で叶えた幸せ』

著者
段躍中 [編]
出版社
日本僑報社
ISBN
9784861852862
発売日
2019/11/13
価格
2,750円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

中国で叶えた幸せ 第2回「忘れられない中国滞在エピソード」受賞作品集…段躍中編 日本僑報社

[レビュアー] 加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

 中国に行ったことがある日本人を対象とした作文コンクールの受賞作品集である。老若男女がつづる体験談はノンフィクションだが、短編小説集のような味わいがある。

 北京へ単身赴任した父が、一時帰国する。ひまわりの種をかじり、寝言で中国語をつぶやく父の姿を見て、中学生の娘はとまどう。その後、娘の反抗期は家庭崩壊レベルまで悪化。父は帰国を決意する。時は流れた。「結婚するから。あとさ、私、中国に行くことになったから」。上海勤務の辞令を受けた夫と中国に渡る日、娘は昔の「父の気持ちが少しわかった気がした」。

 早稲田大の院生は回想する。彼女は小4から高校卒業まで大連に単身留学した。中学で、歴史の授業で日中戦争が取り上げられると、仲良しだった同級生から悪口を言われたり、無視されたりするようになった。2011年、高1のとき、東日本大震災が起きた。彼女は学校で赤い羽根の募金活動を始めた。「日本のために募金してくれるだろうか?」。結果は――。

 上海日本人学校の校長となった男性は、87歳の老父を帯同する。中国語が全く分からない「おじいちゃん」は、毎朝6時には起きて一人で外出し、よく迷子になる。老人にやさしい国・中国を離れるとき「おじいちゃん」がぽつりと漏らした一言が、胸を打つ。

 日本の私大で研究者間のトラブルに巻き込まれて大学を追われた教員は、再起の場を求めて中国の大学に就職する。学校の観劇会で京劇にはまった福岡の高校生は、一目惚(ぼ)れした役者の舞台を見るため21歳で北京に留学する。このほか、オタク文化を中国人と熱く語り合う大学生や、「優しさ貯金ゲーム」で中国人との共同生活を成功させたシンガーソングライターなど、興味深いエピソードは尽きない。

 人の数だけ人生がある。ありのままの中国も、人の数だけある。日本人と中国人のふれあいの多彩さに驚かされる1冊だ。

読売新聞
2019年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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