スナック墓場…嶋津輝著

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スナック墓場

『スナック墓場』

著者
嶋津 輝 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163910918
発売日
2019/09/12
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

スナック墓場…嶋津輝著

[レビュアー] 本郷恵子(中世史学者・東京大教授)

 本当の店名はスナック波止場。霧笛がボーと鳴って、海を見つめるマドロスさんの背中が泣いてるぜぇーではなく、内陸部の商店街の最果てで営業している。「きれいどころが一人もいない」わりに繁盛していたのだが、常連客が次々と亡くなるために、誰が呼んだかスナック墓場、ついにオーナーが鬼籍に入り閉店を余儀なくされた。雇われママの美園さんは年金生活に、一緒に働いていたハラちゃんと克子も新しい仕事をみつけた。その後も3人は年に一度集まることにしている。

 全7編を収録する著者嶋津氏の初短編集。失礼ながら少々薹(とう)がたった新人とお見受けする。そのせいか、朝ドラみたいに前向きすぎたり、熱血すぎたりの鬱陶(うっとう)しさとは無縁。登場人物は自分探しもしないし、自己実現とかも考えていない。人生に対して誠実だが、よけいな欲は持たない。みんな「あるもので何とかする」人たちだ。

 華はないけど味がある。さびれているがさびしくない。スナック波止場の今年の同窓会は大井競馬場。叫ぶハラちゃんに、私も心のなかで唱和する。「そのままーーっ!」(文芸春秋、1400円)

読売新聞
2019年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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