今年、生誕140年の永井荷風が師と仰いだ森鴎外について残した「鴎外全集をよむ」「鴎外記念館のこと」などの随筆や、全集の解説・広告文、鴎外忌(7月9日)の日記などを収録した文庫オリジナル。
自らを慶応義塾大文科教授に推薦した鴎外との出会いと別れの日々、文学志望の青年に「まず鴎外全集を一通り読んだ方がよい」とアドバイスするなど師への心酔ぶりが伝わってくる。
ほかに、荷風が親しんだ浅草や、鴎外の墓もあった向島などにまつわる文章、自伝や作品回顧なども。人、町を愛した荷風の人間味がしみる。(永井荷風著、中公文庫・1000円+税)
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2019年12月8日 掲載
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