令和誕生 退位・改元の黒衣たち…読売新聞政治部著 新潮社/秘録 退位改元 官邸VS宮内庁の攻防1000日…朝日新聞取材班著 朝日新聞出版

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令和誕生

『令和誕生』

著者
読売新聞政治部 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103390183
発売日
2019/10/17
価格
1,650円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

秘録 退位改元

『秘録 退位改元』

著者
朝日新聞取材班 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784022516381
発売日
2019/10/18
価格
1,760円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

令和誕生 退位・改元の黒衣たち…読売新聞政治部著 新潮社/秘録 退位改元 官邸VS宮内庁の攻防1000日…朝日新聞取材班著 朝日新聞出版

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 3年前の夏、NHKは当時の天皇陛下が退位の意向を示したとスクープする。その後、政府や国会での議論を経て、今年5月での代替わりが決まる。この推移を2冊は克明に記録する。

 タイトルと装丁はそれぞれの社のスタンスをはっきりあらわす。「元号の強みは、日本人に共通の時代感覚を生み出す点にある」と読売新聞は書く。平成から令和への変わり目は、新しい時代の幕開けだという。大きなうねりの中、天皇や首相すらも黒衣(くろこ)のように読める。微笑(ほほえ)む天皇皇后両陛下の姿に希望を込めているようだ。対して、朝日新聞は、元号を「国民の代表である内閣が決める」との観点を軸に、関係者に肉薄する。ひとりひとりの記者がいかに動き悩み、そして書いたのか。普段の紙面に出ない内幕をさらす。表紙の写真は副題に合わせている。

 話の起点も異なる。読売新聞は今年4月1日の新元号発表に注目している。朝日新聞は3年前のおことば、さらに2010年の宮中での会議に話を戻す。同じ一連の出来事を捉える上で視点は異なる。

 見方の違いは2冊が示すさまざまな論点についても広がり、読み手は、みずからの立場を問い直す。

 そもそも「生前退位」とは何なのか。なぜ、賛否が分かれるのか。代替わりの日付をめぐり意見が割れる理由は何か。新元号を改元よりも前に明らかにしてはいけないのか。「保守派」は、いったい何に重きを置いているのか。

 落ち着いて考えてみると、どれも議論が尽くされたとはいえない。だからこそ、記者たちがこうしたプロセスをつぶさに記す営みは尊い。

 ひるがえって私たち、否、「元号の専門家」として取材に応じてきた私は、代替わり関連の行事を見世物のように消費し、安定的な皇位の継承のみを注視しているのかもしれない。

 令和初の年末年始を控え、同時代の生き証人に導かれ元号や天皇について熟考する機会が、読者を待ち受けている。

読売新聞
2019年12月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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