ちくわぶの世界…丸山晶代著、渡辺博海・写真 ころから

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ちくわぶの世界

『ちくわぶの世界』

著者
丸山 晶代 [著]/渡邉博海 [写真]
出版社
ころから
ジャンル
芸術・生活/家事
ISBN
9784907239480
発売日
2019/11/08
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

ちくわぶの世界…丸山晶代著、渡辺博海・写真 ころから

[レビュアー] 本郷恵子(中世史学者・東京大教授)

 「おでんの主役はやっぱりちくわぶ」とまでは断言しないが、でもとりあえずちくわぶでしょう。それもちょっと煮すぎて、お味が沁(し)みて、くたっとしたのが好きよ。

 静岡の居酒屋で、大根と黒はんぺん、「あと、ちくわぶも」と注文したら、「静岡おでんには入れません」とけんもほろろ。「関東の人は、ちくわぶちくわぶ言うけど、あんなもんどこがいいのかね」。地方によって食材や調理法が異なるのは心得ていたつもりだが、お近くと思っていた静岡でこんな仕打ちを受けるとは。ちくわぶの流通圏がきわめて限られていることを、私はこの時はじめて知ったのであった。

 実はちくわぶは東京の下町を中心に、東京近郊でのみ食されているローカルフード。小麦粉に水を加えて捏(こ)ねることでグルテンを発生させ、もっちりと仕上げる。生(なま)麩(ふ)よりも製造が簡単で、安価なうえにお腹(なか)にたまる。庶民の味方として親しまれてきたが、日持ちしないために、1980年代に真空パックが登場するまでは、遠方に出荷できなかったのだという。

 足立区生まれの著者は、少女時代よりこよなくちくわぶを愛し、とうとう「ちくわぶ料理研究家」として、ちくわぶの普及伝道に乗り出したそうな。溢(あふ)れるちくわぶラブを捏ねてまとめて、ちくわぶの聖地赤羽の出版社から刊行したという次第。ちくわぶの歴史に、製造工程の見学ルポ、手作りにもチャレンジしたが、かなりの重労働で「作らずに買いましょう」という結論に達した。メーカー7社に取材したページでは、社史・製法・特徴のほか、製品の断面写真を載せている。くらべてみれば各社各様、とりどりにキュートで、お味にも個性があるようだ。揚げても焼いてもおいしいレシピに、オリジナルソングまで作っちゃった。

 おでんと熱燗(あつかん)のうれしい季節。あつあつちくわぶのおともに、ぜひ一冊。おっといけねえ、汁がはねちゃった!

読売新聞
2019年12月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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