『レジリエントな学校づくり』
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<東北の本棚>災害後も教育活動継続
[レビュアー] 河北新報
レジリエントな学校とは、事件・事故や災害への高い「レジリエンス(抵抗力・回復力)」を持つ学校のこと。非常時にいかに教育活動を継続し、児童生徒への影響を最小限にとどめるか。学校関係者や研究者らが東日本大震災時の事例などを紹介し、企業などで作成するBCP(事業継続管理)の考え方を、学校運営に導入する具体的な手法を提示した。
震災後、被災地での教育活動の中断は、児童生徒に多くの影響を与えた。国の調査では、授業再開までの時期が長いほど、心身不良を訴える子が多かった。
困難を極めた学校再開。津波により校舎が全壊した宮城県南三陸町戸倉小の当時の校長麻生川敦氏は、その復旧活動を振り返る。地域、家庭との協働体制構築、設備や備品の調達、心のケアのための遊び場作りなど、丁寧に取り組む必要があるものが多く「業務量を低く見積もりすぎていた」と述べる。
BCPは「事業を中断させない、中断しても短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画」だ。学校再開を事業と捉えると、校内の安全確認、家庭への連絡などの業務が必要で、安全確認にも確認チェックリスト、役所との連絡手段などを決めておく必要がある。どの程度の被災で何が損失、不足するか推測して、それを確保できる対策を講じる。代替戦略も重要だ。(1)学校が使用不能になった場合の代替連絡拠点を定める(2)同時に被災しない距離にある学校との相互協力を結ぶ-などが考えられる。
BCP策定方法も詳しく示しており、すぐに実践できる内容になっている。
編著者の渡辺氏は東京学芸大大学院教授(教育学)。佐藤氏は東北大災害科学国際研究所教授(工学)。
大修館書店03(3868)2299=2750円。