「国宝ロストワールド」…岡塚章子、金子隆一、説田晃大著

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国宝ロストワールド

『国宝ロストワールド』

著者
岡塚章子 [著]/金子隆一 [著]/説田晃大 [著]
出版社
宝島社
ISBN
9784093887229
発売日
2019/10/25
価格
1,760円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「国宝ロストワールド」…岡塚章子、金子隆一、説田晃大著

[レビュアー] 本郷恵子(中世史学者・東京大教授)


『国宝ロストワールド』
岡塚章子、金子隆一、説田晃大[著]
(小学館)

 興福寺の阿修羅像は若々しい面貌(めんぼう)とともに、のびやかな腕の表情が魅力だ。だが合掌しているはずの腕の一部が欠けている。明治35~38年(1902~05年)に修復が行われる前の状態を捉えた写真である。名古屋城の天守には、トレードマークの金の鯱(しゃちほこ)がついていない。金鯱(きんしゃち)は政府に献納されて、明治5年の湯島聖堂博覧会、同6年のウィーン万国博覧会に出陳されていたのだ。

 信仰の対象である仏像、政治や生活の場であった城などは、近代日本の建設にともなって国家の文化的背景を示す「文化財」という役割を与えられた。文化財を細部まで精確(せいかく)に記録するために、黎明(れいめい)期の写真家たちは工夫と革新を積み重ねた。

 著名な国宝の見たことのない姿が、本書には数多く掲載されている。写真史上に残る重要な作品ばかりで、一点ごとの重みと深さが凄(すご)い。沖縄戦と先日の火災とで、2度失われた首里城正殿の本来の様子を知ることもできる。(小学館、1600円)

読売新聞
2019年12月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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