キリン解剖記…郡司芽久著 ナツメ社

レビュー

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キリン解剖記

『キリン解剖記』

著者
郡司芽久 [著]
出版社
ナツメ社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784816366796
発売日
2019/07/08
価格
1,320円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

キリン解剖記…郡司芽久著 ナツメ社

[レビュアー] 一青窈(歌手)

 私が次女を産んだ時にお祝いとしていただいたのがソフィーというゴム製のキリンの人形で、フランスではアンパンマンのように愛されている国民的キャラクターの玩具である。

 長女がそれを見て、きりんりりん♪と、歌をうたいながらリビングで嬉嬉(きき)としてダンスを始めたので、何がこんなにまでも心を掴(つか)むのだろう……? と首を傾(かし)げたのだが、素敵な本に出会った。

 そもそも何故キリンの首は長いのかという疑問から出発し、最もキリンに近い動物がオカピであることを教えてくれて、大型動物の解体・骨格標本作成を通して未知の世界の扉を開けてはわかりやすく説明してくれる。

 著者と共に解剖学の論文を読み解き、世紀の大発見につながる研究テーマを獲得するくだりは、非常にワクワクした。郡司さんのキリンへの愛が本からこぼれ出てくるようで、愛(いと)しい気持ちもお裾分けしてもらった。

 動物園で亡くなったキリンはどこで解体され、博物館に並ぶ標本となっていたのか、誰が解体していたのか根本的に謎にも思わなかったことにスポットライトが当たっていて面白い! そもそもキリンの遺体が高速道路に乗り、サービスエリアを通過してるなんて想像だにしなかった。

 “アフリカに生息するキリンが脂肪の量が極めて少なく 標本が作りやすい”という著者は、謙虚でフラットなので、共感のオンパレードである。物事の発見や進歩にはまず対象物に対する限りない愛と敬意、そして観察が大切なのだということが何よりも分かる。

 ただシンプルに“好き”ということで、無目的、無制限、無計画で突き進む彼女の人生の軌跡を辿(たど)ればあなたの心は軽くなる。

 そうだ、娘がキリンを好きなのも、歌い踊り出してしまうのも理由なんてないのだ。

読売新聞
2019年12月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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