怪奇日和…ジョー・ヒル著

レビュー

4
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怪奇日和

『怪奇日和』

著者
ジョー・ヒル [著]/白石 朗 [訳]/玉木 亨 [訳]/安野 玲 [訳]/高山真由美 [訳]
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784596541239
発売日
2019/09/17
価格
1,547円(税込)

書籍情報:openBD

怪奇日和…ジョー・ヒル著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 著者のジョー・ヒルは、「蛙(かえる)の子は蛙」という諺(ことわざ)の真実を体現する作家である。父親がホラーの帝王スティーブン・キングなのだから。父子で作風もよく似ている。ぱっと見ではどちらの作品か見分けがつかないほど分厚い文章の連なり方もそっくりだ。

 ただ、デビュー作『20世紀の幽霊たち』で私たちホラーファンを仰天させたときから、ジョー・ヒルの持ち味は、父キングのあの絨毯(じゅうたん)爆撃のような映像的描写力ではなく、事実を積み上げてゆくノンフィクション的な緻密(ちみつ)でクールな文体にあることは見えていたと思う。四作の中編小説を集めた本書でも、古式ゆかしいポラロイドカメラ怪異譚(たん)の「スナップショット」、不思議なスカイダイビング体験記「雲島」、容赦のない超異常気象を描く「棘(とげ)の雨」、どれも面白いけれど、圧巻はリアルな事件ものの「こめられた銃弾」だ。山火事が迫る町で発生した銃撃事件と、それに巻き込まれた人びとの交錯する思惑がよじれて、最悪のところに帰結する。傑作だが、銃床でぶん殴られたみたいな読後感にはご注意ください。白石朗ほか訳。(ハーパーBOOKS、1407円)

読売新聞
2019年12月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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