『パンティオロジー』
- 著者
- 秋山 あい [著]
- 出版社
- 集英社インターナショナル
- ジャンル
- 文学/日本文学、評論、随筆、その他
- ISBN
- 9784797673807
- 発売日
- 2019/11/05
- 価格
- 2,420円(税込)
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女性の私生活を覗き見する感覚も パンティにまつわる赤裸々告白
[レビュアー] 大竹昭子(作家)
まったくこの本には驚かされた。子どものときから、お腹を冷やすなと母親に口をすっぱくして言われたせいか、パンティへの関心をまるで育てることなく、下半身を包むものという狭いイメージのまま今に至ってしまった。女性たちがこれほどパンティについて語ることがあり、そのひとつひとつにプライベートライフを覗き見ているようなおもしろさがあり、かつ自分の人生を顧みることになろうとは、思いもよらなかった。
三十三人の女性に、セクシー、リラックス、お気に入りのパンティ計三枚を挙げてもらい、それにまつわるエピソード、夫やパートナーや恋人の反応、日々の暮らしぶりなどを取材、パンティの手描きイラストとともに一冊にまとめたものである。
はじまりは、アーティストの著者が自分のパンティを描いてまわりに見せたこと。おもしろがってくれたので、他の人の話も訊き、「パンティオロジー」と命名してフィールドワークに乗りだした。
こんなヘンテコな調査は、もし著者が日本に住んでいたならとても思いつかなかっただろう。フランスに暮らし、ランジェリー売り場に男性の姿があるのにびっくりした時期を過ぎると、日本と違う男女の関係のあり方に惹かれていく。三十三人の調査対象者の多くがフランス人で、日本人も含めて他国の人も出てくるが、フランス人の話が圧倒的におもしろく、想像を刺激する。掌編小説のような味わいだ。
読むうちに判明するのは、パンティは大人の女性にとってセクシーな気分を盛り上げるための小道具だということ。手描きイラストのパンティはやわらかく魅惑的で、「身につけても可愛い、脱いだときに床に落ちていても可愛い」という言葉に深くうなずく。彼女らに比べたら、パンティを穿き心地でしか考えたことがなかった私は、つまるところ幼児のレベルなのだった。