令和だから読みたい、「寅さん」を知らない世代でも「イイネ!」な人情味あふれる鉄道旅行紀行

レビュー

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旅鉄BOOKS 024 寅さんの列車旅2 寅次郎旅人情篇

『旅鉄BOOKS 024 寅さんの列車旅2 寅次郎旅人情篇』

著者
「旅と鉄道」編集部 [編]
出版社
天夢人
ISBN
9784635822077
発売日
2019/12/23
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

令和だから読みたい、「寅さん」を知らない世代でも「イイネ!」な人情味あふれる鉄道旅行紀行

[レビュアー] 新田浩之(ライター)

「寅さんの列車旅に関する本の書評を書いてください」と言われたとき、私は少し心もとない気持ちになりました。私は1987年生まれ、小学校3年生のときに、寅次郎を演じた俳優の渥美清さんが亡くなりました。つまり、映画『男はつらいよ』や昭和時代をよく知らない世代なのです。作品は自宅で1回観たのみ。こんな私が本書を手に取ったわけですが、『男はついらいよ』知らない世代でも十分に楽しめる一冊に仕上がっています。本書は『寅さんの列車旅』の続編です。前作『寅さんの列車旅 映画『男はつらいよ』の鉄道シーンを紐解く』と比べると、鉄道旅行にウエイトを置き、より軽い気持ちで読み進められました。

ワンマン列車、スマホ主流の時代だからこそ

「昭和を知らない」世代からすると、駅員や車掌、乗客と寅さんとのやり取りを描いたコーナーが新鮮でした。現在、ローカル線を走る多くの普通列車は車掌がいないワンマン列車となり、乗客もスマホを通じてのコミュニケーションを楽しんでいる状況です。以前と比べると乗務員と乗客とのコミュニケーションはめっきり減ったように思います。「昭和」を知らない方なら、寅さんとの微笑ましいやり取りに羨ましさを感じるのではないでしょうか。寅さんのセリフや仕草を噛み締めながら読むと、コミュニケーション能力や人間力向上のヒントが見つかるかもしれません。

マニア心をくすぐらせる構成

本書の特徴は単なる懐古趣味ではなく、現在を意識している点です。静岡県の大井川鐵道の旅では寅さんの思い出スポットを訪ねるだけでなく、同社が展開する蒸気機関車や私鉄車両の動態保存もきちんと紹介。蒸気機関車だけでなく、元近鉄特急16000系や元南海21000系「ズームカー」の写真はマニア心をくすぐります。寅さんのエピソード話も数多く取り上げているので、『男はつらいよ』ファンも楽しめる構成になっています。

また、取り上げている路線も実に渋い。一般的な旅行本なら寅さんゆかりの路線の中で、名の知られた根室本線や久大本線を取り上げると思います。一方、本書は特急列車や観光列車が走らない兵庫県の姫新線を紹介。津山駅にあった駅弁「しいたけ弁当」や登録有形文化財の美作滝尾駅舎と寅さんのエピソードを読み、姫新線の知られざる魅力を発見しました。寅さんを介して知られざるローカル線の魅力を再発見できる。もしかするとローカル線を盛り上げるヒントが本書にあるのかもしれません。

2019年、映画『男はつらいよ』は誕生から50周年を迎え、50周年を記念した新作映画も昨年末から上映されています。寅さんが盛り上がりを見せている今だからこそ、本書を片手に寅さんとの鉄道旅行を楽しみたい、「昭和を知らない」筆者はそのように思いました。

天夢人
2020年1月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

天夢人

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