ダイエット幻想…磯野真穂著 ちくまプリマー新書

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ダイエット幻想

『ダイエット幻想』

著者
磯野 真穂 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
芸術・生活/家事
ISBN
9784480683618
発売日
2019/10/07
価格
924円(税込)

書籍情報:openBD

ダイエット幻想…磯野真穂著 ちくまプリマー新書

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 「この本はあなたのやせたい気持ちを否定するものではありません。(中略)やせたい気持ちとうまく付き合う方法を考えるための本です」

 この一文だけで、本書が他のダイエット本とは全く趣旨の異なるものであるとわかる。著者は文化人類学者として、私たち女性が「やせてきれいになりたい」と思う気持ちがどこから生じているのか考えてみようと促してくれる。あなたはやせたいのか? それとも、やせたいと思わされているのか?

 まずショッキングな事実として、一般に健康的なBMI(体格指数)は22であると言われているところに、日本の若い女性の5人に1人はBMIが18・5以下なのだという。さらに「シンデレラ体重」と憧れられている指数は18だ。これは栄養失調の指標の一つになる数値だというのに。

 著者はいう。「人が比較の上で何かを変えようと思った時、その背後には何らかの価値観があります」

 私たち日本の女性は、いったいいつから無条件に「やせている方がいい」という価値観を抱くようになったのだろう。「やせなければ美しくなれない」「幸せをつかめない」「恋愛が成就しない」「太ることは恥ずかしい」。いつからそう信じるようになったのだろう。望ましいのは個々の「私」にとって健康的で動きやすい体重(体格)であるはずなのに、なぜ「やせたい」「現状よりもやせなければ」と、常に思うようになってしまったのか。

 やせることと「充実した(満足のゆく)人生」を、短絡的に結びつけるようになったのか。

 思えば、「ありのままで」と高らかに心の解放を歌い上げて全世界の女性たちの共感を呼んだエルサだって、超スレンダーな美女だった。今の私たちは、「ありのまま」にさえ価値観のバイアスがかかっている。だから、切実にやせたいのに、やせられない自分は駄目だ――と思い詰めている貴女(あなた)にこそ本書をお勧めしたいのです。

読売新聞
2020年1月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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