情報過多の時代に可能性を生み出す「マインドフル・リーダーシップ」とは?

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情報過多の時代に可能性を生み出す「マインドフル・リーダーシップ」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

THE SPACE ビジネスを成功に導くリーダーシップは「心の置き場所」を見つけることから始まる』(ジャニス・マートゥラーノ 著、田中順子 訳、TAC出版)の著者は本書の冒頭で、次のように主張しています。

マインドフルネスは、ただのストレス軽減方法でもなければ、深呼吸するだけのものでもない。宗教でもない。通常ほとんど鍛えられていない心の能力を養う方法論である。

知ってのとおり、体には生まれながらにさまざまな能力が備わっていて、それらはフィジカルトレーニングによって高められる。そして30年以上にわたる研究によって明らかになってきたように、心の能力もトレーニングによって高めることができる。(「はじめに」より)

ビジネスの現場で起こるさまざまなことに振り回されてしまったとしたら、思うようにリーダーシップを発揮できなくても当然です。

では、どうすればいいのでしょうか?

大切なのは、「いま、目の前で起きていること」に集中し、「心の置き場所」を確保すること。そうすれば、穏やかな気持ちで正しく決断できるという考え方。

つまりそれこそが、本書で提唱されている「マインドフル・リーダーシップ」のコンセプトなのです。

ちなみに著者は、アメリカの大手食品メーカーであるゼネラル・ミルズで15年間にわたりバイスプレジデントなどを勤めたのち、2010年12月にマインドフル・リーダーシップ協会を設立したという人物。

現在も同協会事務局長として、マインドフルネスと優れたリーダーシップを探求するためのカリキュラムを開発し、全米上位200企業、大学、行政機関、軍隊などにトレーニングを提供しているのだそうです。

第1部「マインドフル・リーダーシップとは何か?」のなかから、基本的な考え方を抜き出してみることにしましょう。

なぜマインドフル・リーダーシップが必要なのか?

まず気になるのは、「この瞬間に“マインドフル”である」とは、どういうことなのかということだと思います。

著者によるとそれは、あるがままに、自分の人生、目の前の出来事のため存在している状態

こうであったらと希望したようにではなく、 こうだろうと予想したようにではなく、 ここにあるものを過剰にも過少にも評価せず、 あなたを条件反射的な行動に導くような判断もせず、……今ここにあるものに、一瞬ごとに冷静に向き合っている。 (17~18ページより)

現代社会においては生活環境も労働環境も絶え間なく進化しており、組織にはこれまで以上に複雑な経済的、資源的制約が課せられるようになっています。

そして私たちは、情報過多の時代のなかで不安を抱いて生きている状態にあります

しかも情報から遮断されれば孤立し、耐えられなくなってしまうはずなので、一概に情報を否定するわけにもいかないのです。

利用できる情報が増えれば増えるほど、確実性は向上するどころかむしろ低下しているのが現状だと著者は指摘しています。

なにかしらの問題に直面したとしても、情報量が多すぎるだけに、なにを信じて誰に従えばよいのか判断できなくなくなることも少なくないのです。

とはいえ、こうした激動の時代が、イノベーションのための絶好の機会と可能性を提供してくれているのも事実。

世界の距離が縮まるなか、本当の意味で創造的かつ生産的な、思いやりのある方法によって、現代の複雑さに対応できる可能性があることに、私たちは気づいているわけです。

つまり、そんな“いま”こそリーダーシップが必要なときであり、「優れたリーダーシップ」とはなにかを再定義すべきだと著者は考えているのです。(17ページより)

マインドフルなリーダーとは?

マインドフルなリーダーは、集中力、明確さ、創造性、他者への思いやりを養うことによって、リーダーの影響力(リーダーシップ・プレゼンス)を体現しているものなのだそうです。

リーダーシッププレゼンスは、目に見える特性。「いまこの瞬間」に対して客観的な視点を持ち、最新の注意を払わなければ、体現することは不可能だということです。

そしてマインドフルなリーダーの周囲にいると、その影響力は目に見え、感じることができるのだといいます。

逆の立場から考えるなら、自分自身がいまやっていることに全神経を集中させれば、相手にもそれが伝わるということにもなるわけです。

リーダーシップ・プレゼンスの力は絶大だ。これまでの人生を振り返ってみても、あなた自身、あるいは他の誰かの中にリーダーの影響力を感じたことをおそらく何度か思い返すことができるだろう。1対1の会話のときだったかもしれないし、聴衆でいっぱいの講演会でのことかもしれない。影響力は遠くからでも感じられる。

反対に、自分が“心ここにあらず”の状態だと感じたこと、会話の相手の意識がこの場にないと感じたこともよくあるはずだ。誰しもそうだが、いくら集中しようとしても、心はすぐにとりとめがなくなる。

過去のことを考えたり、未来のことを考えたり……今現在に向いているのは、意識のうちのほんの一部になってしまう。本来は誰もが「今ここ」に集中する能力を持っているのに、そういうときにはその力を発揮できていない。(23ページより)

「いまここに存在する」とは、自分が意識していること以外は周囲になにも存在していないかのように思えるときのこと

たとえば子どもが生まれるときのような重大な瞬間かもしれないし、ふと夕陽の美しさに引き込まれるなど、見過ごされがちな瞬間かもしれません。

いずれにしてもそうした瞬間が、人生に本当の意味を与えてくれるということです。

それは、頭のなかでつくり上げた筋書きを追っているときや、やることリストにチェックを入れているとき、心のなかでリハーサル済みの会話をしているときとは違って、私たちの意識が完全に自分の体と感覚に宿っている瞬間。

そして、高い地位にいる人の「意識をいまここに集中する能力」と「リーダーシップ・プレゼンスを行使する能力」は、その人個人にとって重要であるだけでなく、家族や友人、勤務している会社、住んでいる地域社会、ひいては世界全体にまで影響を及ぼすもの。

つまりリーダーシップ・プレゼンスを養うことによって、結果的には、個々人に対するよりもはるかに大きな効果がもたらされるものだと著者は主張しているのです。

そう考えると、マインドフル・リーダーシップがいかに重要なものであるかも実感できるのではないでしょうか?(22ページより)

続く第2部、第3部では、リーダーのための瞑想の実践方法や、全能力を生かすための手段や考え方が紹介されていきます。

より優秀なリーダーとしての自分を磨いていくため、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

Source: TAC出版

メディアジーン lifehacker
2020年1月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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