『やりたいことを全部やれる人の仕事術』
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「やらないこと」を決めたら「やりたいことをやれる人」になれる
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『やりたいことを全部やれる人の仕事術』(岡田充弘 著、PHP研究所)の著者は、クロネコキューブという謎解きイベント企画会社の代表。
他にも100以上のプロジェクトを回しつつ、年10回ほどトライアスロンやマラソンの大会にも参加しているのだといいます。
いかにも充実した人生を送っているように見えますが、最初からうまくいっていたわけではないようです。
なんとなく「やりたいこと」を思い浮かべてはいたものの、実行できずに悶々としていた期間が人より長かったというのです。
私自身はやりたいことをやれるようになるまでにずいぶん遠回りしてしまったので、皆さんにはできるだけ早くその状態に到達できるよう、具体的な手元の技術や環境整備の方法を本書でお伝えしたいと思っています。
ただ、すぐに実現しないからといって焦る必要はありません。本書でご紹介する方法を地道に積み上げていくことで、才能に関係なく誰でも確実に目指す状態に近づいていけますので、どうぞご安心ください。(「はじめにーー『すごい人』ではなく『幸せな人』になるために」より)
つまり、このような考え方に基づき、本書では「やりたいことをやれる人」になるためのメソッドを紹介しているわけです。
きょうはそのなかから、「時間」に焦点を当てた第3章「やりたいことを全部やるための『時間作り』編」に注目してみたいと思います。
やりたいことのために、やらないことを決める
やりたいことをやるためには、「目的」「ゴール」「ステップ」を明らかにすべき。
しかしゴールから逆算してアクションやステップを割り出していく際に、つい不要なステップまで抽出してしまったり、ステップの切り方が偏ってしまったりすることもあるでしょう。
そんなときに重要なのは、あらかじめ「やること」「やらないこと」の基準を決めておくこと。そうすれば、ステップの無駄打ちを減らせるというわけです。
そして基準を決めるにあたり、「緊急度」「重要度」「必要工数」の切り口で整理し、以下のように優先順位を決めてみることを著者は提案しています。
① 重要度が高い、緊急度が高い、工数が多い/少ない→すぐ取り組む
② 重要度が高い、緊急度が低い、工数が少ない →後で取り組む
③ 重要度が低い、緊急度が高い、工数が少ない →即時に処理する
④ 重要度が低い、緊急度が高い、工数が多い →時間があればやる
⑤ 重要度が低い、緊急度が低い、工数が多い/少ない→やらない
(88ページより)
① →⑤が優先順位の高い順ですが、物事のステップは必ずしもこの順番で並んでいるとは限りません。
逆に、あまり深く考えずに④⑤から始めてしまう人がいるものの、それらは切り捨ててしまっていい場合が多く、実際には①②③のみに取り組むのが理想的だといいます。
ポイントは、「すぐに済むから」とやみくもに進めてしまうのではなく、「より重要度が高い(≒付加価値が高い)ステップやタスクはなにか?」を意識すること。
そうすれば、目的達成までの大幅な時間短縮につながるというわけです。
逆にいえば、それだけ重要度が低い(≒付加価値が低い)ことに時間や意識を取られてしまっている人が多いということ。
でも、先に「やらないこと」を決めてしまえば、あとは「やること」しか残らないのですから、自然と迷いが減って行動に移しやすくなるそうです。
なお、もしも①から⑤までの優先順位を思い出すのに苦労するようであれば、初めのうちは「重要度」>「緊急度」とだけ覚えておき、それ以外のステップは大胆に捨ててしまうのもひとつの方法。(87ページより)
やたらと選択肢を増やさない
なにかを判断しなければいけないとき、必要以上に選択肢を増やしてしまう人がいます。
「これも考えておかなきゃ」というように不安が大きくなっていくにつれ、頭のなかがどんどんいっぱいになってしまうわけです。
しかしそれでは、即断などできなくて当然。
判断スピードを速くしようと思うなら、やたらと選択肢を増やさないことです。選択肢が少なければ少ないほど、判断に要する時間は少なくて済みます。(98ページより)
そのため著者も、身の回りのあらゆる選択肢が自然増殖しないように気をつけているのだそうです。
たとえば普段着る服の数も少なく、色もほぼ黒。シャンプーや整髪料などの消耗品は銘柄を決めていて、定番品をまとめ買いするのだそうです。
カバンや財布の中身も、秒速で取り出せるように極限まで中身を減らしていて、パソコンとスマホがあればこと足りるので、文具などもごくわずか。
その他のことも含め、集中力や時間を奪う可能性があるものは徹底的に排除しているというのです。
仕事における判断でも、3つの選択肢から選ぶのと、10以上の選択肢から選ぶのとでは、考慮すべきことも、熟慮する時間も大きく変わってきます。
しかも実際には、考慮すべき価値ある選択肢など、せいぜい上位3つ程度だったりするものでもあります。
だとしたら、たくさんの選択肢から判断するのも、優先順で上位3つくらいから判断するのも、結果はおう大きく変わらないということになるはず。
それどころかむしろ、後者のほうが効率的かつ合理的な判断と言えそうです。
仕事も人生も、「選択」で成り立っているもの。
せめて衣食住など「日ごろの選択肢」や仕事中に生じる「有事の選択肢」は、常に上位3位までと決め、いたずらに増やすべきではないと著者は主張しています。(98ページより)
日ごろからやりたいと思っていることがあるのなら、それが大きなことであれ小さなことであれ、なにひとつ諦めないでほしいと著者。
他人の意見に左右される必要もなく、いますぐに始めるべきだという考え方も、心にとどめておきたいところです。
大切なのは「すごい人」になるためではなく、「幸せな人」になるために自分を変えていくこと。だからこそ、本書を活用してほしいということです。
やりたいことができずにモヤモヤしている方の背中を、本書は押してくれるかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: PHP研究所