IDENTITY アイデンティティ…フランシス・フクヤマ著

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IDENTITY(アイデンティティ) 尊厳の欲求と憤りの政治

『IDENTITY(アイデンティティ) 尊厳の欲求と憤りの政治』

著者
フランシス・フクヤマ [著]/山田文 [訳]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784022516060
発売日
2019/12/06
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

IDENTITY アイデンティティ…フランシス・フクヤマ著

[レビュアー] 瀧澤弘和(経済学者・中央大教授)

 格差が拡大しているのに、どうして左派は衰退に歯止めをかけられないのか。トランプ現象、英EU離脱はどう理解すべきか。本書は従来の左右対立図式では理解困難となった現代政治の構図をアイデンティティと承認欲求の観点から鮮やかに説明する。

 興味深いのは後半部、現在のアイデンティティ政治が生じてきた経緯の分析だ。20世紀後半の福祉政策の行き詰まりのなかで、左派が共有しづらい細分化されたアイデンティティ承認と多文化主義へと舵(かじ)を切った。これに対し、右派は「ポリティカル・コレクトネス」攻撃で結集、独自のアイデンティティ政治で対抗するようになる。

 多様性を一面で評価しつつも、民主的な政治秩序を重視してきた著者のこと。人種、性、宗教など相対的に固定化したアイデンティティに基づく政治は生産的に映らない。やはりナショナル・アイデンティティは重要であり、それを理念的なものへと再構築していくべきだとする。

 最後は政策提案にも踏み込む。分析枠組みは骨太で、全体として説得力がある。山田文訳。(朝日新聞出版、2000円)

読売新聞
2020年1月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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