対論!生命誕生の謎…山岸明彦、高井研著 インターナショナル新書

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対論! 生命誕生の謎

『対論! 生命誕生の謎』

著者
山岸 明彦 [著]/高井 研 [著]
出版社
集英社インターナショナル
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784797680478
発売日
2019/12/06
価格
880円(税込)

書籍情報:openBD

対論!生命誕生の謎…山岸明彦、高井研著 インターナショナル新書

[レビュアー] 仲野徹(生命科学者・大阪大教授)

 学問には論争が付きものだ。しかし、自然科学系では、有無を言わさぬ決定的なデータにより論争に終止符の打たれることが多い。それでも未(いま)だに結論が出ない、いや、いつまでも出そうにない研究テーマがいくつかある。その最たるものの一つが生命の起源である。

 地球上の全ての生物は、約40億年前に存在したはずのLUCA(最終普遍共通祖先)に由来する。この考えに異論を唱える人はまずいない。だが、LUCA以前に地球最初の「生命」がどこでどのように誕生したかには、複数の説が並列されている状況である。この本は、異なる説を信奉する研究者2人による大激論だ。

 願ってもない好取組は、かたや海洋研究開発機構の超先鋭研究プログラム長である気鋭の微生物学者、高井研。こなた国際宇宙ステーションでの生命起源探索研究「たんぽぽ計画」のリーダーである円熟の分子生物学者、山岸明彦。生命誕生の場について、高井は深海の熱水噴出孔、山岸は地上の温泉と主張する。

 生命は一般的に代謝、自己の複製、膜による外界からの隔離の三つによって定義される。高井は代謝を重視し、生命の誕生は必然であったとする。対する山岸は複製を重んじ、生命誕生は偶然度の高い出来事であったと考える。

 若き高井が「屁(へ)理屈キターー」と挑発するかと思えば、老練な山岸は「その考えをどう受け止めるかは、研究者の度量しだいです」といなす。丁々発止、互いに一歩も譲らない。

 最後、物別れに終わるかと期待したが、地球外生命を対象とする学問・アストロバイオロジーでは、残念ながら(?)意見が一致する。現在の生物学は「地球生物学」に過ぎず、普遍性に欠ける。いつか地球外生命体が発見されて解析が進んだ時、ようやく生物学が物理学や化学と同じレベルのサイエンスになるという。壮大で読み応え十分な知的大一番、ぜひご覧いただきたい。さて、あなたの軍配は?

読売新聞
2020年1月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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