謎のアーティスト「バンクシー」の歩み

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バンクシー

『バンクシー』

著者
毛利嘉孝 [著]
出版社
光文社
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784334044466
発売日
2019/12/18
価格
1,078円(税込)

書籍情報:openBD

謎のアーティスト「バンクシー」の歩み

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 まだご記憶の方も多いだろう。小池都知事が、傘をもったネズミの絵を指さしている写真。この絵は昨年1月、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)日の出駅近くの防潮扉で見つかった。匿名のストリート・アーティスト、バンクシーの作品と思われる。

 都知事はこの絵を喜ぶコメントを公開し、ニュースは拡散した。背景には、その数カ月前の「事件」があった。サザビーズのオークションで、約1億5千万円で落札されたバンクシーの絵が、その場で裁断された(額縁にシュレッダーが仕掛けられていた)のである。自分の絵に投資する人々をあざ笑ったのだが、皮肉なことにこの事件以降、バンクシー作品の価値はいっそう高まったようだ。

 バンクシーとは何者か。ネズミの絵を「ホンモノ」だとする東京藝大教授がバンクシー作品(カラー図版多数)を解説し、謎のアーティストの実像にせまるのが、毛利嘉孝『バンクシー アート・テロリスト』だ。アートの最先端がテーマなだけに、不安定に揺らぐ「真実」を追いつめるのは難しいが、そのスリルは魅力的である。

 バンクシーは一個人ではなく、緊密に意思統一されたチームと一体になって活動している。だが東京でネズミが描かれただろう2000年代初頭には、彼は東京でひそかに落書きをのこせる程度に「個人」であった。バンクシーの歩みを知ることは、現代アートをおもしろく見るためのひとつの道だと思う。

新潮社 週刊新潮
2020年1月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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