『ケーキの切れない非行少年たち』で話題!! 宮口幸治(著)『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』

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コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング

『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』

著者
宮口幸治 [著]
出版社
三輪書店
ISBN
9784895905060
発売日
2015/03/07
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

『ケーキの切れない非行少年たち』で話題!! 宮口幸治(著)『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』

[レビュアー] 鴨下賢一(リハビリ発達支援ルームかもん・作業療法士)

「もし五感から入った情報を処理する段階で間違えてしまったらどうなるでしょうか?」

 間違った情報を基に一生懸命行動しても、結果はゆがんでしまいます。そして、見たり聞いたりする力の弱さから学校の勉強についていけず、みんなに馬鹿にされ、学校がおもしろくなくなり、怠学したり不良仲間とつるんだりして、非行に足を踏み入れてしまうことがあります。

 筆者は、法務省宮川医療少年院法務技官・児童精神科医として勤めたご経験から、このように認知機能に問題のある少年たちを大勢みてこられました。そして、非行少年に対する教育プログラムとして、コグトレ(Neuro-Cognitive Enhancement Training:N-COGET)を開発されました。

 コグトレは、認知機能の強化を目的としており、ここでいう認知機能とは、記憶、言語理解、注意、知覚、判断・推論を指しています。コグトレは、認知機能を高めることで外部環境から情報を得て整理し、それを基に計画を実行し、さまざまな結果をつくり出していく過程で必要な能力を高めることで、人がよりよく生きていけるための力を育てていきます。

 コグトレは、「覚える」、「数える」、「写す」、「見つける」、「想像する」の合計5つの分野をターゲットとしたトレーニングから成っており、本書1冊で基本的な認知機能をトレーニングできるように構成されています。「覚える」では、視覚・聴覚性の短期記憶〔視覚性の単純短期記憶、視空間ワーキングメモリ、聴覚(言語性)ワーキングメモリ〕と文章理解のトレーニング。「数える」では、記号等の数を素早く数えたり、計算することで、注意力、集中力、処理速度の向上を目的としたトレーニング。「写す」では、提示された図形の模写を中心に形の把握を主にした視覚認知の基礎力のトレーニング。「見つける」では、視覚認知の応用である形の恒常性、複数の視覚情報の中から共通点・相違点を見つけるトレーニング。「想像する」では、提示された視覚情報から、関係性の理解、論理的思考、時間概念を想像し、実行機能の向上を兼ねたトレーニングを「コグトレの進め方」に沿って4カ月コースと8カ月コースとで段階づけて行うことができます。

 各トレーニングは、簡単かつ手軽に認知機能を高められるように工夫されており、付属のCDには800種類もの課題が納められ、子どもの課題に合わせてプリントアウトして使用できます。また、できるかぎり楽しめるように子どもができる範囲で行い、解答に完璧さを求めるのではなく、「課題に取り組んだことをほめる」ことを重要視しています。自尊感情がうまく発達できていない子どもたちにとって、重要な視点をもったトレーニングということになります。

 コグトレの対象疾患は、定型発達幼児から注意欠如・多動症や学習症等の発達障害や知的障害と幅広く使用でき、対象年齢は、ひらがなの読み書きができる年齢以上となっていますが、課題によっては3歳くらいから取り組めます。そして、子どもだけでなく高齢者の認知機能トレーニングとしても十分活用していくことができる内容になっています。

 5章では、DN-CAS認知評価システムを使い、コントロール群と対照群を設け、コグトレのベースとなった認知機能強化トレーニングについて、3カ月間のトレーニング前後とトレーニング終了3カ月後で比較した効果検証も紹介されています。結果は、対照群にすべての項目で有意に向上が認められ、終了3カ月後もその効果は持続していました。発達障害を治療対象とする作業療法でぜひ活用したいトレーニング方法ですし、本書の中でも作業療法士の使用が勧められています。

 姉妹本の『不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング』も併せて活用していくことで、発達に障害のある子どもたちのよりよく生きていくための機能の発達を促すことができると思われます。

 コグトレ研究会(https://cog-tr.net)に随時情報がアップされているので、こちらもチェックしてみるといいでしょう。

作業療法ジャーナル
第49巻8号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

三輪書店

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