賀茂川コミュニケーション塾 ビブリオバトルから人工知能まで…谷口忠大著 教養みらい選書

レビュー

4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

賀茂川コミュニケーション塾

『賀茂川コミュニケーション塾』

著者
谷口 忠大 [著]
出版社
世界思想社
ジャンル
総記/情報科学
ISBN
9784790717379
発売日
2019/11/26
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

賀茂川コミュニケーション塾 ビブリオバトルから人工知能まで…谷口忠大著 教養みらい選書

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

 えー、今日初めてこのビブリオバトル(本を紹介しあう競技)に参加するイイマです。この本を読もうと思ったのは、コミュ障の僕でも人とのつきあい方が分かるかな、と思ったから。文章はラノベ仕立てで入りやすかった。教授と高校生たちとのやりとりで話が進むんだ。

 前半は、ビブリオバトルの極意とか、会議で出席者の発言を促す方法とか、日常のコミュニケーションの問題が取り上げられる。そもそも、ビブリオバトル自体、この本の著者が大学院時代に発案した競技なんだそうだ。

 後半になって、教授が特に熱を込めて語るのは、専門の人工知能(AI)の研究について。

 僕たちは、人とことばを交わしたり、肩をたたき合ったりして、何となくコミュニケーションができた気になっている。でも、そのコミュニケーションって何だろう。相手とどういうことができれば、コミュニケーションが成立したことになるのか。とても難しい問いだよね。

 人間がAIに「リンゴは好きですか?」と聞いて、「はい、好きです」と答えさせることはできる。でも、AIは実物のリンゴがどんなものか分かって答えているわけじゃない。これは人間同士のコミュニケーションとは別物だ。それなら、どうすればAIが実物のリンゴを「リンゴ」と認識できるのか。教授はそんな問題意識から、ロボットを使った研究を続けている。人間のコミュニケーションをAIにモデリングさせようという、壮大な研究だ。

 話はやがて、ことば(記号)の創発システムに及ぶ。僕なりにまとめると、ことばというものは、個人個人が生きた使い方をする中で少しずつ変わっていき、やがて、ことば全体の秩序が新しくなる。教授の言う記号創発システムとは、そういうことかと思う。

 絶えず変容することばのシステムにAIが対応できた時、人間とAIは本当の会話ができるんだろうね。今にそんな日が来るのかな。

読売新聞
2020年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加